講義を受講したり、レポートを書いたりするときの参考になることを期待しますが、最終的にはそれぞれの分野の専門教科書に当たることをおすすめします。
いわゆる「ロボット工学」は、
その一方で、ロボット、広くはメカトロシステムを構築するには、いくら理論を知っていてもだめで、様々な工学の専門分野をピックアップし、結びつけて一体化する必要があります。
「ロボットを動かす」ことが主体の工学があるなら、「ロボットをつくる」ことが主体の工学があってもおかしくない、という主張を「開発」に込めています。
一般に大学の科目は、卒業に近くなるほど専門性が増して、担当する領域が狭くなる傾向があります。
それに対して、ロボットの開発は、多岐に渡る技術分野の総合です。
ロボットはメカの部分、電子回路の部分、コンピュータのソフトウエアがあります。
メカの部分だけをみても、構造材があって、機構があって、それぞれの部品の強度設計や材料の選定、加工など、多くの要素からなっています。
しかし、よく考えてみれば、それらは4年生になるまでに、機械の専門科目として多くの先生方の手によって講義されてきていますし、実際、多くの学生さんがそれらを履修してきています。
では、ロボットを構築するのに何が足りないか、答えは「どこにどの知識を使うべきか」です。
このことはものづくりを実際に体験することで、自ずと気づくことで、私自身、長年の?工作人生で、技術の適用法を身につけてきました。
この科目は、その経験を元にして、おおざっぱではあるけれども、ロボット、メカトロシステムの開発の手法を追うことで、「どこにどの知識を適用すればいいのか」「これまで学んできたことの実際の使い道」を紹介することが最大の目的です。
併せて、大学卒業前に、これまで習ってきたことを今一度確認する意味もあります。
もちろん、新しく増える知識もあると思いますが、多くは「どこかでやったことがある気がする」はずです。
その「やったことがあるはず」をちゃんと引き出して、適用できれば、意味のある知識だったと言えるでしょう。
なお、この科目の英語名には、"Mechatronics III"と書いていることがあります。
(なんで、メカトロ開発工学じゃないかというと、長くなるし、「メカトロ」より「ロボット」のほうが知名度があるから(笑))
この講義では、それぞれについて、ひろく浅く、実例込みでお話しします。 併せて、レポートという形で、要所要所は受講者に本気で検討してもらいます。 それにより、なんとなくでも「ロボットをつくるために必要なこと」を考える体験をし、今後それが必要になったときの「とっかかり」としての「雑学」を身につけることを目的とします。
本科目は本年度新規開講科目であり、 以下の計画は理解や進度に応じて修正する余地がある。 第1回 導入:ロボットをつくる 第2回 構想:ロボットの目的と基本仕様の策定 第3回 機構:ロボットの構造の検討 第4回 数学:ロボットの動作の解析 第5回 力学:ロボットに作用する力 第6回 材料:ロボットに用いる金属・樹脂材料 第7回 材力:部材設計と強度 第8回 動力:ロボットを動かすためのアクチュエータ 第9回 電力:エネルギー供給と見積 第10回 計測:なにを計り、どう使うか? 第11回 回路:アクチュエータの駆動 第12回 回路:センシングとコンピュータ 第13回 制御:ロボットのための制御理論 第14回 制御:制御ソフトウエアとリアルタイム制御 第15回 試験
本科目では、ロボットをつくる上で考えなければならないことを、おおざっぱに広く浅くさらっていきます。
ものを運ぶ=腕状のものをのばす、と単純に思いつきますが、ある程度以上空間が大きくなると、ものを運ぶよりも長くなった腕を支える方がつらくなります。
もちろん、実現性まで考えると、そこそこ行けそうな構造を考えて、計算して比較することになります。
慣れれば、直感的に向き不向きがより現実に近く分かるようになりますが、とりあえずは機構を考えて、計算を始めてみましょう。
そのために、架空の目的をたて、ロボットの仕様を策定します。
(円筒=向きを問わない)
たとえば、灯油のポリタンを動かしたいという場合、その場から動かずに腕を伸ばすだけで運ぶより、ぶら下げた上で足で移動した方が体には無理がかかりません。ただ、それが50[mm]ずらすだけなら動く必要はないでしょう。