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実際の現場では「任意の運搬」が必要ということは普通はありません。その意味で、現実離れはしていますが、指定の領域で搬送を行うロボットを考えてみましょう。
なお、「実際につくるわけ」ではないので、それほど無謀なアイデアでなければ、かまいません。
その結果、計算値があり得ないことになるかもしれませんけど、それもまた経験です。
今後、そのロボットのアイデアに基づいて、力の見積や、強度計算、制御方法などを考えていきます。
検討結果は、なるべくリアルに(構造が分かるように&寸法比が正確なように)、図面やイラストの形にまとめてください。
その際、検討の経過はノートにまとめておくこと。今後のレポートの下地になります。
ただし、一度選んだら、この講義の終了まで責任を持ってもらいます。
まずは、ロボットの内部の細々とした力のやりとりではなく、おおざっぱに「外から見て分かる」直接的に作用する力を考えてみます。
ロボットに作用する力で直感的に思い当たるのは以下の3種類です。
地球上では、言うまでもなく、ものには重力が作用します。
搬送する対象はもちろん、ロボットを構成する各部品にも発生します。
ロボットの構造によっては、搬送対象に働く重力よりも、ロボット自身の自重のほうがずっと重荷になることもあります(たとえば、「お姫様だっこ」は鍛えてないと普通はできない:自重ぶんだけ抱えて運べない)。
運ぶだけなら、おもに重力、慣性力ですが、組立ロボットや機械加工ロボットの場合、押しつけたり引っ張ったりするための力が別に必要になります。
下向きの組み付けであれば、ロボットの(部分の)自重が使える可能性が高く、自分を支えられるだけの強度出力があれば十分ですが、上向きに押しつけようとすると自重+押しつけ力が必要となります。
そのため一般には上向きに押しつけるような組立は避けたほうがいいでしょう。
横向きの場合はケースによります。
ものを加速的に動かす場合には慣性力が作用します。
並進の動きに対しては、いわゆる
移動するためには加減速が必要で、それなりに俊敏な動きをするには大きな加速度が必要となります。
それと関連して、力×速度=動力も重要な要素です。そのため、「俊敏な」は二重に影響してきます。
つぎに慣性力ですが、
慣性力=ma (aは加速度)、=I d2θ/dt2 (Iは慣性モーメント,d2θ/dt2は角加速度)
なので、並進については質量と加速度、回転については慣性モーメントと角加速度を見積もる必要があります。
慣性モーメントについてはロボットの各部の概略の質量が分かれば、「多めに=安全側」そこそこ手軽にに見積もることは可能です。
加速度、角加速度については、別途、運転の「速度パターン」を想定して計算(決定、仮定)する必要があります。
さて、「ロボットの各部が決まれば質量は求まる」は確かなのですが、大きな問題点があります。
「ロボットの質量」→力、トルク→モータの出力決定、構造材の強度計算→ロボットの構造や材質決定→「ロボットの質量」
ある意味、決まらないのです。
最悪のケースでは「重いから強化したら、また重くなった」というスパイラルに陥ります。
そういうときは、どこかで「えいや」と決めてしまう、構造や材料を工夫しておなじ質量でもより強度を増したり、同じモータでも動きやすくする、そもそもロボットの構造を改める、といったことが必要になります。
いずれにせよ、これらの計算を繰り返し行えることがロボットの設計には必要です。
慣れると、直感で「こんなもん」と決めて、その上で「OKかどうか」のチェックのために計算しますが、足りなければ壊れ、多すぎれば無駄でむやみにコストが高くなる、という危険性は常にあります。
例:角パイプ
長さ100mm、断面は縦80mm、横60mm、肉厚は5mm。
※本来はSIで計算すべきだけど、この計算だけは昔ながらのcm単位が便利※
断面積=8x6-7x5=48-35=13cm2
体積=13x10=130cm3
ここで材質をアルミ系(アルミやジュラルミン)とすると、密度は約2.7g/cm3なので質量350g/長さ100mm程度、鉄系の7.9g/cm3とすると、1kg/長さ100mmとなる。
この程度の長さなら大きな違いに見えないかもしれませんが、長さ1メートルのアームなどをつくろうとすると、10kgになってしまい、かなり重くなります。もちろん、鉄を使うなら、普通はこんなに肉厚にすることはないので、非現実的な例ではあります。
なお(1)、この角パイプ断面を横長ではなく縦長に置いている理由は分かりますよね?
なお(2)、案外見落として罠になるのが「ねじ」です。ネジの質量は1個1個は小さくとも、数が多くなるとバカになりません。
右の連続体(直方体形状、長さl、質量m、太さは無視)で計算してみます。計算式にある微少部分の質量dmは、軸からの距離方向rの微少区間drの質量と考えると、(dr/l)mになるので、
あえて手を抜いて、この棒を一つの質点としてみてみます。
さて、この軸からの半径、を決めるにはモータの設置場所も決めなければなりません。
右の図のように、モータの位置はいろいろ置き場所が考えられます。
同様に、おなじ(a)関節の手前 に置くとしてもモータを
台形加減速は、運動させるときに、速度や角速度を右図のような、時間−速度グラフで台形状になるような運動です。
実際に計算してみます。
加速部分のみを考えて、加速度a(角加速度ならd^2θ/dt^2)で加速したとすると、時間がt経過したところで速度はat、移動距離は(1/2)at^2になります。
この数値をつかって、2000mm移動することを考えます。
最初の例は加減速動作なしです。ただし、動作制御の「加減速」は「意図的に調整された加減速」を意味し、それがなくとも、当然現実には加減速があります。
次の例は台形加減速です。この場合、傾き一定の区間が、加速度一定の区間となり、装置に要される慣性力はこれに比例した力となります。
ロボットの概略図の上に矢印などで図示すると共に、その具体的な説明と大きさを述べてください。
大きさについては、算出方法を必要な仮定と共に述べてください。
と計算できます。
まず、単純に重心位置、すなわち軸からl/2のところにあるとすると、
となり、本来の(1/3)ml^2よりも多少小さくなります。誤差と見なせなくもないですが、安全の観点からすると問題です。
一方、質量が、一番遠いところに集中していたと考えると、ml^2になります。これは3倍大きい値なので安全ですが、過剰すぎる可能性があります。この程度の簡単なものははしょらずにちゃんと計算した方がいいでしょう。
なお、慣性モーメントはあちこちに典型的な形の計算法が記されています。これを、先の重心周り→距離ずらしの式で動かしながら加算していくのが現実的には簡単です。
また、3次元CADを使うと、素材を指定すると複雑な形でも一発で質量共々出してくれたりします。
直感やこの先の計算で大まかな必要トルク(力)、速度が求まったとします。
そこから、また別の計算に基づいてモータや減速機の選定を行います。
選定により、最低限、カタログから質量(重量と書いてあることが一般的)が得られます。
腕型のロボットにおいて、ピンクで示した肘の関節を駆動するモータはどこに置けばいいでしょうか。
(a)関節の先 (b)関節の手前 (c)ロボットの根本
関節の先に置くと、根本から遠くなると同時に、単純に肘関節で駆動すべき質量、慣性モーメントが増えるため、不利です。腕を高速化する際には根本にモータなどを置いて、ベルトなどで関節まで動力を伝える方法がありますが、この場合、動力を伝える機構の設計が増えます。
とくに多自由度の場合は複雑化し、逆にガタなどで精度が落ちる可能性もあり、(c)がベスト、とも言えません。
よほどスペース的に無理、などでなければ、(a)だけは避ける、が基本です。
(d)前の関節の直後に置く (e)駆動する関節のそばに置く
の選択があります。単純には、前の関節の駆動にかかわる慣性モーメントを減らすために(e)が無難ですが、これも短いとはいえ動力伝達が必要なので要注意です。伝達機構の搭載のために質量や慣性モーメントがやたらと増える設計をしたら無駄ですので。
慣性力を求めるには、あと加速度が必要です。
加速度は目標とする運動=速度パターンを決めれば、そこから計算できます。
ここでは台形加減速を例に実際の計算をしてみます。
最初に一定加速度(角加速度)で加速し、その後一定の最高速度をとり、最後に一定加速度で減速します(加速時と減速時の加速度は等しくなくともよいが、ここでは等しいとする)。
この台形の底辺の長さが運動に要する時間、台形の面積が総移動量になります。
なお、移動距離が短い場合は最高速度まで上がらない三角になります。また、この運動は直線運動でも回転の運動でも同様に使われます(ただし、回転で台形加減速すると、手先の速度も加減速するものの、手先座標の運動は台形にはならない)。
たとえば、200mm移動したところで最高速度1000mm/sになるような運動を仮定すると、
となります(aは重力加速度の約1/4)。
最初と最後の200mmは加減速に使われ、各々0.4sかかります。
中間の一定速度部分は1000mm/sで残りの1600mmを移動するので1.6sかかります。
よって、合計で2.4sが必要になります。
単純に等速なら2sとなりますが、加減速のためにより長く時間がかかります。
よって、往復動作をロボットにさせようとすると、単純に距離/1往復あたりの時間で出した速度よりも性能が必要になります。
この場合、速度の微分値としての加速度は、計算上は無限大になります。
実際に無限大にはなり得ないので(駆動力は無限ではない)、制御の遅れなどの問題を起こしつつ、装置の限界で加速することになります。
最後の例は、より滑らかな関数を使った例です。2次関数(以上の多項式)をつないだものや、正弦波関数を用いたものがあります。当然、上記のような計算はより複雑になります。
この両者の違いは、加速度の波形に出てきます。ロボットなどにいきなり加速度をかける、ということはいきなり慣性力をかけるということです。車でたとえればいきなりアクセルやブレーキを踏むことに相当し、乗り心地が悪くなります。
機械にいきなり力をかけたり抜いたりすることは、一般には振動の原因になりますし、もしも装置にガタがあると、いきなりぶつけることになります。
台形加減速があれば、加減速操作がないのよりはずっと無難ですが、より滑らかな加減速が要求される場合もあります。
なお、同じ時間で同じ速度まで加速しようとすると、当然滑らかにしたほうが、ピークの加速度=ピークの力は高くなります(加速度の面積が速度になる=細長くなるため)。
最終的に、とんでもない計算結果になるかもしれませんが、あまり気にせず、「計算してみること」の意義を優先して、やってみます。
今回実現不可能な数値がでたら、次におなじ設計をしなければいいので。
実際にロボットを開発するとき、摩擦は見落としがちでありながら、全体の性能にかなり影響するので、以下、詳細を見てみます。
右の図は静摩擦と動摩擦の関係を表しています。
徐々に力fをかけていくとすると、静止しているうちはfと逆向きに、fと同じ大きさの静摩擦力Fが生じます。
大きさとしてはF=fです。
次に、典型的な摩擦力の例を示します。
ただし、静摩擦の限界(=μN)に達すると(f-Fの外力によって)動き始めてしまいます。
すると、Fは動摩擦力に移行し、最大値Fmaxよりも下がり、動摩擦係数×Nになります。
また、摩擦の方向も運動の逆方向になります(力の方向を変えずに動かしている場合は方向に変化がありませんが)。
このように、摩擦力の一部の例だけでも多様で、パターン化も困難です。
モデル図 説明 水平面上に物体がある場合。
垂直抗力は重力による、面の反力(厳密には、物体の面にも路面にも双方に垂直抗力は働く)。
最大の静止摩擦力は
となる。動摩擦力の場合も式の形は同様。
車輪に関わる摩擦。
車輪と路面の間に発生する摩擦力は、上記と同じ。
駆動輪の場合は、車輪を回す力がFmaxを超えなければ、安定して推進できる(超えて動摩擦になるとドリフト状態)。
従動輪の場合は、車輪が自由に回る、つまりf=0に相当するので、進行方向の摩擦力は本来生じない(軸受けの抵抗などを無視すれば。また、軸方向には摩擦力は生じうる)。ただし、物体が転がるときには「ころがり摩擦」と呼ばれる僅かな摩擦力が生じる(普段はほとんど無視できる)。
車輪移動ロボットを加速度aで加速しようとすると、加速の慣性力はmaとなり、滑らないためには
となる。よって、ロボットの加速度はμ(とg)によって制限される。
ちなみに、μは乾いていれば1.0を超える場合もあるが、潤滑すると0.2を切る。
車輪が複数有り、駆動は一部の車輪のみの場合。
車輪に生じる垂直抗力は、その合計値が、自重mgになる。
しかし、車輪で駆動する場合、上記計算の摩擦力は、駆動輪の垂直抗力分のみになる。
左図では、N2は関係なく、N1だけになる。
そのため、実現できる加速はμgには及ばない(N2の分目減りしている)。
つまり、「駆動輪にかかる自重」が非常に重要になる。
斜面における摩擦力。
典型的な問題。斜面の水平からの角度をθとすると、
なので、これが坂を下る方向の重力分力よりも小さければ滑らない。
車輪で坂を登るという場合も同様である(mgcosθは駆動輪のみの垂直抗力の計算になり、mgsinθはそのままであることに注意)。
ただし、移動体の場合はこれに加減速に必要な慣性力も加わるので要注意。
押しつけ力による摩擦力の向上。
摩擦係数には限度があり、自重ではまかなえない摩擦力を必要とする場合に、自重に加えて外力でさらに押しつけることが解決策となる。
たとえば、F1のレースカーは羽根をとりつけることで、流体力学的に路面に押しつける力fextを発生させて、摩擦力を増し加減速やカーブでの遠心力等により耐えるようにしている。
ロボット競技として有名な相撲ロボットやマイクロマウスでも、ファンを取り付けて路面を吸引したり(車体下部の圧力を下げて大気圧で押しつけるとも言える)、強力な磁石で床面の鉄板に吸い付けたりして、摩擦力を増やしている。
ハンドの場合。
両側から、力Nで挟むとすると、摩擦力は、
となる。両側から挟む場合、その力は等しいはずで、両サイドで×2となる。
ただし、μには限度がある(ハンドと対象物両方で決まるもので、対象物に依存する)。
また、Nも壊れやすいものなどの場合にあまり大きくできない場合がある。
そのため、実際の仕様に基づいて精査し、左右からのはさみではなく、下からの掬い上げのような、摩擦に直接頼らない方法を検討する必要もあり得る。
という原則をもとに、都度、考えた方がいいでしょう。
現実的な設計では、静摩擦と動摩擦を行き来するような状況は避けるべきです。
あくまで、静摩擦で十分耐えられるか、十分に小さい摩擦力にして抵抗を避けるか、のどちらかを求めるべきです。
右図のように、車軸をロボット車体内のベアリングA,Bで支えます。 車輪には、車体を支えるための力(床からの抗力)Fが作用し、これによって、ベアリングA,Bに力Fa,Fbが作用しているとします。 また、ベアリングと車輪の間隔を図のようにa,bと定めます。
力のつり合いから、
釣り合いより、
さて、このFu,Fdを低減するにはどうすればいいかと言えば、Mを小さくするか、hを大きくするかです。
前者は軽量化によって、後者はなるべく軸受けの間隔を広くすることで対応します。
もっとも、軸受けの間隔はロボットの腕の縦幅以上にはなりません。その中で軸受けをなるべく離します。
右図のように、歯車や、ベルト(もしくはチェーン)でトルクMを伝えようとする場合、歯車のかみ合い部や、ベルト(プーリの接線方向とベルト張力)には力Fが作用します。
なお、これらの力はむしろ、歯車やベルトの強度のチェックに用いられます。
歯車の場合は、歯面が斜めになっているので、全体的に見て計算したFよりも、多少大きなF'の力が歯面にはかかっています(普通の歯車だと、あまり大きくはならない。圧力角20度で6%増し)。
A点周りでのモーメントのつり合いから、
これらを解くと、
となります。
つまり、車輪よりのベアリングは、支持している荷重より大きな力が作用します。
また、aを小さくすることで、その割り増し分を低く抑えることができます。
逆に、aを大きく、bを小さくすると、Faがかなり大きくなる可能性があります。
そのため、右図のうち、(a)と(b)は妥当な案と言えますが、(c)は明らかにベアリングへの負担が大きく、よほどの事情がなければ採用しない方がいい案です。
もちろん、数字の上では、(b)より(a)のほうがAにかかる力は小さくなりますが、全体的に大きくなる=質量がかさんでコスト高になる=可能性が高いので、計算で確認して、ほどほど、が現実的と言えます。
水平関節型ロボットの関節のいいところは、関節を駆動するためのトルクに、ロボットの腕にかかる重力が含まれないことです。
トルクは腕の運動のみのため(つまり慣性力のみ)だけを想定すれば良く、比較的小さくて済みます。
一方、対象物、関節から先の腕の自重などは、関節のメカで支えます。
この検討をしてみます。
右図のように、根本に近い側(薄緑)で、先端側(ピンク)を挟むように構成します。
シャフトは先端側に対しては固定していて、そのシャフトを根本側でベアリング支持するとともに、何らかの機構で駆動します。
先端を引っ張る方向に力F、自重等により、腕を下に曲げる方向に働くモーメント(材力のモーメントと同義)をMとします。実際には、これに腕を下に下げる方向(軸方向)の主に重力による力が作用しますが、とりあえず無視します。
このFとMを軸受けにかかる力FuとFdで支えます。
ここで、軸受け間の長さを2hとしています。
これを解くと、
となります。
一般にこのFはあまり大きくはなりません。水平方向に押しつけたり、振り回すことによる慣性力が主要因です。
一方、Mは明らかに影響が大きそうです。
そのため、Fdはマイナスになる可能性は大きいでしょう。つまり、図とは逆に右方向に押す力です(なにか物を自分で上下で持ってみればすぐに分かりますが)。
そのため、下のように、「先端側で上下から挟む」形は同じ外形寸法でもhが小さくなるので、避けた方がいいでしょう。
ただ、このほうが駆動系を納めやすいことも確かで、必ずしもNGとは言えません(上の案は緑色の薄い部分に駆動系も入れなければならない)。
先ほど無視した、鉛直方向(軸方向)の重力などによる力は、もちろん、設計上は無視できません。
とくに、ボールベアリングはあくまで軸に直角方向の加重を支える設計で、軸方向の荷重にはアンギュラ軸受けなどでないと耐えられませんし、限度があります。
そのため、鉛直方向の荷重については、別途スラストベアリングなどを併用して支える必要もあり得ます。
最終的に、何かを動かすための軸のほかにも、動力の伝達系の軸にも荷重がかかります。
これはトルクと、歯車やベルトの半径によります。
歯車がどこかに飛んでいかないようにするためには、この荷重も軸受けで支える必要があります。
図中には明記していませんが、この力Fがそのまま軸にかかります。
伝達するトルクMがさほど大きくなければ、ほとんど問題にはならないと思いますが、念のために確認はしておいたほうがいいでしょう。
以上のように、主に力のつり合いの計算で、軸受けに作用する力は計算できます。
ちなみに、荷重をより受けやすくするために…ベアリングを3個以上にすれば?という案はアリですが、その場合、今度は組み立て精度が悪いと軸そのものが回らなくなる超過拘束の状態になりかねないので要注意です。
ロボットの機構部品は、多くの場合それほど多くの選択肢がありません。
たいていの場合は、それぞれの部品メーカが良かれと思う材料でつくっています。
(一般に小型で大出力・高耐力のものほど、特殊で高級な材料が使われる)
ここでは、自ら設計する、ロボットの構造部分などで使用する材料について見ていきます。
金属系材料:
以下、代表的な材料の形態を列挙します。
アルミ:
ジュラルミン:
理由はレーザーの反射。レーザーが光学系に反射して痛めるとのこと。
そのため、金銀銅もNG。
結果、やはりジュラは高かった。1kgあたり(金属材料はよく、kgあたりの値段を考える)の金額では超々ジュラルミンは黄銅の3倍ほどの値段。ただし、密度は3分の1。
言うまでもなく、構造材では強度が重要。
不足すれば破壊する。ただし一般に、残りの性質が似たような材料では強度が高いほど高価である。
試作、少量の場合はさほど問題にならないが、大きなものだったり、製品としてつくることを考えると、価格は重要な要素となる。
一般に材料に対して追加工を行うため、「加工のしやすさ」は、加工に要する時間、加工代金や精度に関わってくる。
単純に堅い材料ほど加工が大変なようにも思えるが、柔らかい材料は「高精度な」加工が難しかったり、樹脂材料では加工時に切削熱で柔らかくなったり融けたりするものも多い。
長期間使用するものの場合、材料の劣化のしやすさと、その劣化防止のための手間が重要となる。
たとえば、材料としては総合的には良好な鉄系の材料は、錆びる。
錆び防止のためにメッキや塗装を行うが、それにも限度があり、ペンキの塗り直しなどが必要となる場合があるほか、傷が付くとそこから錆びることもある。
工作機械など、むき出しの必要性がある場合は油膜で覆うなどのメンテが必要である。
その材料は、どういった形で入手できるのか、ブロック材か板かパイプか、という点も事前の確認が必要である。
当然ながら、設計に影響する。
材料によっては薄板は入手できない、というものもある。
優れた材料であっても、入手性が悪ければ(買いにくい材料であれば)、使いがたい。
そもそも特殊で入手が難しい場合、巨大なロット単位でなければ買えない場合、などがある。
一般に、入手性が悪い材料は、少量を購入しようとすると高く付く。
加えて、納期も重要である。標準在庫品は数日で手元に届くものが多いが、特殊形状のものなどは受注生産で時間がかかる場合も多い。
構造材としては考慮する必要はないが、外装に使用する場合はある程度考慮すべきである。
金属材料全般に冷たく、かつ、少しでも角があると(角そのものは丸めていても、後に何かで傷ができた場合なども)さわったときに怪我をする危険性もある。
樹脂系材料(いわゆるプラスチック):
以下でもう少し、詳細に触れます。
設計すると言うことは、その先の加工方法を指定することにもつながりますが、そのとき、材料の形状とミスマッチした設計をすると、加工の手間が極端に多くなることがあります。
当然、加工に要する時間(生産性)や加工コストにつながるほか、材料の無駄につながります。
そのため、使おうと思った材料に、適切な形状、寸法のものがあるかどうかを知り、最大限それを加工せずに使うように設計を行うべきです。
基本的に、すべての材料ですべての形態、寸法があるわけではなく、またあっても購入単位が制限される(長さ100mmで買えるか、定尺=2,000mmなど単位になるかなど)ので、事前に確認が必要です。
防食のためには、塗装やメッキ(亜鉛メッキ=トタン板, SECC板、クロムメッキ)などがある。
防食ができない場合は、表面に油をぬるなどのメンテが必要。
単体でも空気中で錆びるが、他の金属と接触させると、より錆びやすくなることがあるので要注意。
アルミ系の材料は大きく、普通のアルミ合金とジュラルミンに分けられます。
ともに、「A○○○○」と4桁の数字で表され、数字に応じて「○千番台」と大別されます(アルミ以外に含まれる金属の組成による:性質が変わる)
黄銅にはいくつか種類がありますが、機械工作用には「快削黄銅」がよく使われます。
鉛を添加した黄銅で、ほどよく堅くなり切削がしやすくなります。(文字通り、快く削れる素材。旋盤とかで削ると癖になる)
主にコストなどの点で、広く使われているわけではありませんが、軽くて強い材料、としてマグネシウムやチタン系の材料が使われる場合があります。
形状としては板材やパイプなど。
両者を比較すると、
と、材料としてはアクリルのほうがよい。
とくに、樹脂材料は「融けること」が切削加工における最大の難点。
アクリル板はレーザー加工でよく切れるが、塩ビは発生するガスの関係でレーザー加工が一般に禁止されている。
日本ポリペンコ社の商標ながら、有名な樹脂。機械にマットな風合いの青いプラスチックが使われていたら、MCナイロンの可能性が高い。
その辺のDIYなどでは買えないものの、業者経由では容易に購入できる。
加工性は良い(融けにくく、削りやすい。やや難しいとも言われるが、削った感じはいい感じだった)。
滑りやすいという特性があるため、摺動部にもつかわれる。
樹脂製歯車の材料になることもある。
板材や丸棒で売られている。
プラスチックのなかでも比較的機械的特性のいいもの。
ABS、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリイミドなど。
レーザー加工は便利であるが、案外アルミが加工できない。
本学のレーザー加工機の場合、鉄板が10mmまで切断できるのに、アルミは3mmが限界(細かい穴などは2mmまで)。
特に、1000番台のアルミはほとんどNG。レーザー加工にかけるなら5000番台のアルミ板が必要。
ジュラルミンも加工能力は30%くらい落ちる(byメーカー談)。
ある部品をつくるために、工場と相談して、切削性のよい快削黄銅を使用していた。
が、重いので、同じ部品を超々ジュラルミンでつくることを検討(やはり切削性はわりといい、普通のアルミではつくれないとのこと)。
で、見積をとってみたら、同じ寸法の黄銅の丸棒と超々ジュラの丸棒で値段が同じ(ジュラが僅かに安かった)。ジュラは高級品というイメージがあったが...。
同じ体積→(重さは1/3)×(kgあたり3倍)→同じ値段
分かってみれば当たり前。ただ、これで「高い材料」といって避ける理由は無くなった。
往々にして、強度計算の結果ではなく、「形として体積が必要」という場合があるが、そのときには「kgあたり」ではなく「体積あたり」の値段が重要。
それが同じで重さが1/3で、かつ、強度もアップ。こんないい材料はない。
ただ、耐食性があまりわかってないが。
基本的に、アルミ系。アルミ板(t1,1.5,2,3)、アルミ厚板(t5, t10, t20)、アルミの押し出しフレーム材(ヤマト製)。
アルミの車輪ホイール削りだし。
その他、ハブ状部品もアルミが多い。たまに黄銅。
ギアボックスはアルミ角パイプにベアリング穴を開けて、パイプそのものを外部ケース兼構造材に。
シャフト系は鋼材(ドリルロッド)。φ2~φ10(最大でφ20)
特に強度がいらないところは、レーザー加工を活用する前提でアクリル板。
レーザー加工を前提にすると、材料に制限はあるが、複雑形状も容易に実現でき、工場の加工の手間も削減でき、良い。ただし、断面は一度熱がかかるのと、完全に垂直にならないので、場合によっては注意。
最近、玉乗りロボットのホイール用に購入していた超々ジュラルミン棒をシャフト系材料、汎用丸棒として転用を試み。
自前ではアルミ丸棒があまり綺麗に削れず、これまで黄銅を使用していたので↑の理由から黄銅の必要が無くなった。
注)ヤフオクの価格は使用禁止(相場を無視しているため)。 通販サイトはOK
材力を適用して計算することは主に二つあります。
右の図は荷重によって部材が影響を受ける例を三つ示しています。 左の例は両端支持のはりを用いた移動クレーン型、中は腕を張り出す片持ち型、右は移動ロボットの車軸部の構造です。 上は模式図、中は構造の主要部に注目した線図、下は部材に生じうる影響です。
ロボットの構造にかかる荷重は、他の部材を支えたり重い駆動装置が乗ったりすることによる集中荷重に加えて、自分自身の分布荷重を考慮する必要があります。
特に、根本に近い部品ほど、その先を支える必要があるため太い構造になり、自身の質量の影響が無視できません。
(その点、車軸は基本的に分布荷重を計算するほど重く長いことは少ない)
材料の許容(構造的、材質的)を越える力が作用すれば、もっとも曲げ応力が高くなるところから壊れます。
多くの場合は、大きな力作用している点ですが、固定端がある場合、固定端の根本には大きな反モーメントなどが生じており、それが原因でそこから破断する可能性は高くなります。
片持ちは両端支持に比べて弱くなりますが、それ以外にも「傾く影響」が出やすくなります。先端部が傾くことで、上下の位置誤差だけではなく、その先の長さ分だけ水平方向の変位が出る可能性があります。
材力計算は次のステップで行うことができます。
前に述べたように、「ロボットの仕様、自重による集中荷重」と「自身の構造の分布荷重」によって計算されます。
後者は使用する材料や、具体的な構造設計によって計算されます。
→最大曲げ応力(主に引張)の計算
→材料の強度と比較(弾性変形の範囲内か=降伏応力、耐力)
→変形による誤差は精度の要求を満たすかどうか(変位・たわみ角→変位)
ただし、繰り返しますが、これらの計算ははりに対して単純に上(横)からの力を加えた場合です。ねじる力が生じる場合の強度は別途検討する必要があるので要注意です。
これは、断面を二つの領域A,Bに分けると、単に
と、積分する範囲を分割できるためです。
なお、あくまで中立面が同じ位置にあることが計算の前提です。そのため、複雑な形状にするにしても、上下、左右対称にはしておいたほうがいいでしょう。
比較的単純な支持の例を右に3つ挙げました。