はじめに \def\Mto#1#2{\left(\begin{array}{r}#1 \\ #2\end{array}\right)} \def\Mtt#1#2#3#4{\left(\begin{array}{rr}#1 \\ #3\end{array}\right)} \def\Mso#1#2#3{\left(\begin{array}{r}#1 \\ #2 \\ #3\end{array}\right)} \def\Mss#1#2#3#4#5#6#7#8#9{\left(\begin{array}{rrr}#1 \\ #4 \\ #7 \end{array}\right)} \def\Mqo#1#2#3#4{\left(\begin{array}{r}#1 \\ #2 \\ #3 \\ #4\end{array}\right)} \def\Mqqa#1#2#3#4#5#6#7#8{\left(\begin{array}{rrrr}#1 \\ #5 \\} \def\Mqqb#1#2#3#4#5#6#7#8{#1 \\ #5\end{array}\right)}
熊谷が平成18年度を持って制御工学IIの担当を降ります。
そのため、本ページ(※)の更新は基本的に停止しますが、ご了承下さい。
※course/controlII/以下のコンテンツ
このページは 東北学院大学 工学部 機械創成(知能)工学科 3年生の講義、「制御工学II」用のオンラインページです。
基本的にはこのページの内容に沿って講義を行っていきますが、だからといって、これに目を通したことで授業を休んだりサボったりしていい理由にはなりません。 逆に、このページをみることも義務づけはしません(が、うっかりここに書いてあるけど話忘れたことを試験に出す可能性は否定できず)。 講義を受ける前の予習(ページ執筆が間に合えば)や、講義内容の補填などに使ってください。 注意事項の詳細をまず確認してください。

講義をうけるにあたっては、板書よりも「話したこと」に注意を払ってください。 おそらく、板書することの多くはここにかいてありますが、脱線して話したことは書いてありませんので。

すでに履修を終えている(はず)の「制御工学I」に引き続いて制御理論を扱うのが、この講義です。
ただし、その中身はがらりとかわります。

制御工学Iでは運動方程式などをラプラス変換してシステムの伝達関数H(s)を求め、その周波数ごとのゲイン(増幅度)や位相(信号の進み、遅れ)を評価しました。ひとことでいうと「周波数領域で考える」制御です。
それに対して、制御工学IIで主として扱う制御理論は、運動方程式などの微分方程式を、微分方程式のまま扱います。また、評価は、たとえば「制御中の目標との誤差のトータルがどのくらい小さいか」とか「操作量のトータルがどれくらいちいさいか(=モータの消費電力がすくないなど)」とかをみます。時間の経過に対する変化をそのまま扱うことが特徴で、「時間領域で考える」制御理論です。

その理論が登場した歴史的?順番から、制御工学Iのほうは「古典制御理論」、今回やるほうは「現代制御理論」と呼ばれています。

ある程度現代制御理論を扱ったあと、いろいろな制御にも触れます。
前述の通り、微分方程式を微分方程式のままつかいます。ですが、ごちゃごちゃした方程式のままでは理論的に扱うことが難しいため、方程式を1階の微分方程式の組に変換します。
(例)

  ↓

  ↓

さらに、これを行列の形で表します。

  ↓

このようにn階の線形の微分方程式は、1階の微分方程式n本に変換できます(非線型でも可の場合あり)。 この形に変換した、各変数を「状態変数」、その関係を記述した上式を「状態方程式」といいます。
現代制御理論では、システムの微分方程式を状態方程式に変換して、この行列Aの性質を数学的に調べたり、これをもとにフィードバックを考えたりすることで、制御を行う理論です。
比較項目古典制御現代制御
扱う対象周波数領域時間領域
数学表現伝達関数状態変数、状態方程式
数式表現sの分数式行列、ベクトル表記
評価対象伝達関数のゲイン、位相状態変数の大きさ、入力の絶対値の積分値を総合的に
入出力基本的に1入力1出力多入力多出力可能
解析手段おおむね手計算でなんとか手計算は難、コンピュータ援用が前提
実装方法アナログ回路、ディジタル回路、ソフトウエアソフトウエア
対象ある程度特性がわかっていれば(近似的な伝達関数が得られたならば)だいたい扱える。内部のパラメータまで細かく表現されている必要がある。
制御設計直感、ボード線図を検討、根軌跡など評価の重みをきめてコンピュータで計算

本講義では現代制御理論の基礎的な部分を中心に扱う他、以下のような「いまどきな制御」内容も扱います。 そもそも、線形、非線型とは、関数とか方程式の種類で、
f(a+b)=f(a)+f(b)
のような性質を持つ物は線形、持たない物は非線型です。制御工学Iで扱ったような対象は基本的に線形(もしくはある範囲で線形とみなせる)ものですが、世の中は非線型だらけです。
たとえば、天井からバネで錘がぶら下がっているような状態のは線形ですが、棒の端をもって振り回すのは非線型です。両者の違いは、前者では常に真下に重力がかかっているだけ、後者は棒が鉛直の時と水平の時で、かかる重力は同じでも持っているところのモーメントが異なります。それも三角関数が入ってきます。
そういった、非線型な対象を制御するには、「線形と見なせる範囲を探す」「おまけを加えて線形にしてしまう」などの手段を使います。 アナログ制御(アナログ回路など)とディジタル制御ではいろいろと違いはありますが、制御という点で見たとき一番大きいのは、ディジタル制御では「時間が連続ではない」ということです。たとえばコンピュータで制御する場合、センサ値の入力、演算処理、出力という一連の動作には必ずプログラムの実行時間がかかります。それ以上短い間隔では制御処理ができません。時間が連続ではない、ということは、微分積分が使えないということなので、その代替をしなければなりません。また、他にも気をつけることがあります。 こういったかちかちの理論的な制御のほかに、生物に学んだような制御理論も最近では実用化されています。 フィードバック制御をしながら対象の特性を徐々に学習していき、それをもとにフィードフォワードを行い、制御特性を改善する。
たとえば、人間が車の運転を学習するとき、最初はメータや線を見ながら、考えながら「あ、たりない」「あ、いきすぎた」とペダルはハンドルを操作しているのが、そのうち行き過ぎがなくなってくる。 生物の神経細胞、神経回路網をコンピュータの中で模擬したもの。入力と出力の間に多数のニューロン(神経細胞)おき、それを接続する。入力と出力のパターンを多数与え、学習させることで、入力に対する出力が得られるようになるため、複雑なもの、非線型なものなどを実現しうる。パターン認識などにも使用。 人間の「こうならこうする、ああなら、ああする」といった経験、勘を手軽に制御に活かせるように考えられた制御手法。「こんな入力のとき、これくらい出力」というルールを入れて、制御する。
仙台市の地下鉄はファジー制御の代表例。そのほか、家電にもいろいろ使われていた。 制御パラメータなどをきめるときに、数学的、直感的にきめられないときに、いろんな組合わせを試すのに有効な手法。 制御パラメータを遺伝子としてまとめ、それに対して交配(交差)や突然変異を与えて新しい遺伝子をつくり出し、そこからパラメータを抽出して評価。評価した結果いいものを残す、という作業をひたすらやる。 時間はかかるものの、予想外のいいパラメータが見つかる場合がある。が、袋小路にはまる可能性もある。