バネ・マス・ダンパ系(右図)を例にします。
運動方程式:
こういったシステムを実際に作り、観測するとき、必ずしもすべての状態変数が見えるわけでもなく、また単独で見えないこともあります。これを一般的に表記すると、
例:上の例で位置が見える場合
(この運動方程式は2階の微分方程式)
ここで、
となります。書き換えると
さらに、行列表記にすると、
となります。ここで、
とおくと、
という形で表記できます。
この行列ベクトル形式で表示したシステムの方程式を
と書けます。前半は状態変数が出力にどう出てくるかを示し、後半は入力が観測値に漏れてくる量です(一般にはあまりありませんが、そういうことも想定しておきます)。この方程式を
以上を一般的な形式で書くと
(入力x:n要素、出力y:m要素、入力u:r要素)
に対しても、
となります。ただし、
です。
※
※
※出力方程式に「+du」があった場合、変形過程に付け加えていくと、伝達関数で単に「+d」になります。
具体的には、
ここで、この変換後のシステムの伝達関数を求めてみます。
このように、解析をしやすくするために状態変数を置き換えることができます。
で表されるような変換を考えます。ここで、n次正方行列Tは逆行列がある=正則であるとします。
Tは定数行列なので、
であり、1入力1出力のシステム
に単に代入すると、
上段の式に左からTの逆行列をかけると、
となります。ここで、
と置き換えを行うと、
と、一般的な状態方程式の形になります。つまり、正則な行列Tをつかって、状態変数を扱いやすいように変換することができます。
これは、Tによる変換で、伝達関数が変わらないことを意味します。同じシステムで、変数の取り方を変えても、その物理特性が変わるはずはないので、当たり前と言えば当たり前ですが、数学的に確認できました。
この時、状態方程式部分については、個々の式にばらしてみると
この方程式
結論としては、システムの行列Aの固有値は、そのシステムの安定性をみる上で非常に重要である、ということがわかりました。また、システムの中の個々の特徴も直接的に見える数値です。
補足:座標変換と特性方程式
と、各状態変数が独立した微分方程式になっています。これは、連立の微分方程式を解く必要もなく、個々の状態変数ごとに解析的に結果を求めることが簡単であることを意味します。
この形を標準系状態方程式、もしくは対角正準系、と呼びます。
なお、固有ベクトルの選び方(個々の固有ベクトルの長さ)でbiをすべて1にすることもできます。
を解いてみます。→制御工学Iの教科書のどこか
まず、ラプラス変換。
ラプラス逆変換して、
を得ます。
このλによってz(t)の挙動は大きく変わります。
λの実部が0未満:安定(たとえば初期値がどんどん0に向う)
λの実部が0以上:不安定(発振、発散)
ちなみに、λの虚部によって、振動的かどうか、その程度が決まります。
座標変換したシステムの特性方程式を計算してみます。
となるため、変数の取り方によって普遍です(直感的に当たり前)。
例1:
aの場合では、とりあえず0には近づくため、システム全体としては安定といえるが、もし、制御できるならばより早く0に近づけるなどの特性改善が可能。bの場合は、発散するため、システムに有害。
例2:
システム
において、bi、ciについて考える。
もし、bi=0だと、
a:λiの実部<0だと、xiは0に近づく
b:λiの実部>0だと、xiは発散
ci=0だとすると、xiの挙動は一切出力されないため、検出不能。
(ごちゃまぜになってはいても、出力さえされていればなんとか分離できる場合が多い)
制御 観測 スイッチでON/OFFできる、室内の電球 ○ ○ スイッチでON/OFFできる、天井裏の電球 ○ × スイッチでON/OFFできない、室内の電球 × ○ スイッチでON/OFFできない、天井裏の電球 × ×
判定法:
一方、rankがn未満であると、不可制御。
に対して、行列
の階数(rank)がnである→「可制御」、「(A、B)は可制御」
判定法:
に対して、行列
のrankがnである→「可観測」「(C、A)は可観測」
可制御性:
可観測性:
別の直感的見方:
状態方程式の、Aに関わる部分だけを見ると、
この行列の1行目と3行目を入れ替えると、
となるため、rank=2、よって可制御ではありません。
rankを求めます。
※2行目−1行目×2,3行目−1行目×3、3行目−2行目
rank=3なので、このシステムは可観測です。
x1は、x1によって変化する
x2は、x3によって変化する
x3は、x1,x2,x3によって変化する
となっています。入力uはx3に変化を与えるため、x3は直接、x2はx3を経由して変化しますが、x1には何の影響もありません。そう考えると、可制御でなさそうです。
一方、出力はx1とx3が混じっていますので、これらは直接観測されます。x2については、x3を経由して変化が見えると言えます。全部見えるので可観測と考えられます。
このページ、ここまで。