そこで、いきなり集積回路、ICになっている「オペアンプ(演算増幅器)」と呼ばれるものを使います。
ICというと、急にやっかいになった気がしますが、本来、ICとは「よく使う特定の機能」や「バラ部品でつくると大きくなり過ぎるもの」を1個のパッケージに小さく収めたもので、「使いやすく」なっています。もちろん、その分、1個1個は複雑になっていますが、同じものを自分で組み上げるのに比べたら、という意味です。
ここで使うオペアンプはその点、動作は簡単で使いやすく、バラ部品で同じ機能を果たすのに比べたら劇的に回路が簡単になります。知っておいて損はありません。
オペアンプは一般に電源端子を2本、入力端子を2本、出力端子を1本持っています(さらに調整用などの端子を持つことあり)。そこで、一般に右に示すような右向きの三角形に線を生やした図を、回路図では使います。
なお、実際のオペアンプのICでよくあるタイプは、
実在のオペアンプはいろいろな制限があります。
このようなオペアンプを使うと簡単に?各種回路が作れます。以下ではそれらについて見ていきます。
右の図のような回路を考えます。入力電圧Viを増幅して、Voを出力します。
つまり、この回路では、2本の抵抗の比で、電圧の増幅率(利得、ゲイン)を決定できます。
さてここで、オペアンプを使った回路の重要な特徴を見ておきます。
特徴1:
特徴2:
ここで、オペアンプは入力端子にほとんど電流が流れないため、入力端子からP点に抵抗Riを通して流れてくる電流Iiと、オペアンプの−端子と出力端子をつないでいる抵抗Rfを流れる電流Ifは等しくなります。
このことを念頭に、式を立てます。なお、図中に記したV??は、各点の基準電位(▽0)からの電圧です。
ここで、Aは電圧増幅度です。
まず、最初の3式より、
また、後半3式より
となります。これを整理すると、
ここで、オペアンプの増幅度Aは無限大とみなせるので、
となります。
この回路は常に出力の安定を保つような動作をしています。なにかの拍子に(たとえば、オペアンプの電源の変動や後ろにつなぐ回路の特性)で出力電圧がわずかに上がったとします。そうすると、それに釣られてP点の電圧も上がります(これもまた内分回路の1つ)。そうすると、オペアンプの−入力端子の電圧が上がるため、オペアンプの出力は下がり、打ち消されます。逆に、わずかに下がったとすると、上げる方向に動作します。
これは出力が−端子に抵抗を介してつながっていることによる動作で、負帰還(ネガティブフィードバック)と呼ばれています。制御工学でもでてくる概念です。
オペアンプは負帰還をかけているときはこのような動作になります。
オペアンプで負帰還がかかっていて、正常動作している場合は、つねに−入力が+入力に一致するように出力電圧が決まります。ずれていると、それが大きく増幅されて出力され、帰還抵抗を通じて−入力に届くためです。この状態は一見すると+端子と−端子が電流は流れないもののつながっている(ショートしている)ように見えます。そこで、これを
まず、
もしくは、さっきの仮想短絡の考え方を適用すると、単に、
この非反転増幅回路はとても便利な特徴があります。それは回路の入力がオペアンプの入力そのもの、つまり、直前の回路から電流が流れてこないという点です(入力インピーダンスが高い)。これは前の回路に負担をかけないという利点があります。センサのわりと多くは電流を引き出すような使い方をすると出力電圧に影響が出ます。そういうとき、この非反転増幅をつかいます。
の各式が成立します。適宜連立させると、
なので、
ここで、Aを∞とすると、
となります。つまり、(1+R2/R1)の倍率で入力電圧が増幅されてでてきます。
から直接求まります。
先ほどの反転増幅は、入力と、仮想接地した点の間に抵抗Riが入っているので、Iiの電流が流れてしまいます(入力インピーダンスRiという)。
唯一の難点は、1倍未満がつくれないことです。増幅なのに1倍未満が必要かというと、電流が流せない回路と電流を要求する回路の間にはさんで「電流を増強」する場合には、たまにそういうことがあります。そのときは、前の回路にもよりますが、分圧した上で増幅ということもやります。
たとえば、10倍の非反転増幅を行うときに、1[Ω]と10[Ω]をつかったとします。 入力に1[V]かけると出力は-10[V]ですが、このとき、各抵抗には、Ii,Ifとして1[A]流れることになります。直前の回路に悪いばかりか、そもそも、10[V]で1[A]流せるオペアンプは特殊な部類(パワーオペアンプ)が必要になります。
これら回路では、基本的に電流は流す必要がほとんど無いため、より大きな抵抗を選定すべきです。ただ、実在のオペアンプでは、入力端子に多少は電流が流れてしまうため、極端に大きな抵抗も選べません。
おおざっぱな目安としては、バイポーラ型オペアンプ(という種類があります)でRf=10[kΩ]程度、FET型オペアンプでRf=100[kΩ]程度がよいでしょう(後者のほうが電流が流れにくい)。
次に抵抗値の選定です。抵抗は、好きな値の抵抗が入手できるわけではありません。一般に入手しやすいのは以下の値です。
10,11,12,13, 15,16,18,20, 22,24,27,30, 33,36,39,43, 47,51,56,62, 68,75,82,91
×0.1, 1, 10, 100, 1000, 10000, 100000
(1[Ω]〜10[MΩ])
この数字の並びをE24系列といいます。半端な数字が並んでいるように見えますが、数字が1つ進む毎に概ね1割増しです。
つまり、増幅率を決めるときはこれらから作れる比となります。
ただし、一般には制約にはなりません。だいたいは「10倍くらい」といって回路を設計するので、細かい値を気にしてもしょうがないです。細かい調整は、センサそのもの特性の補正と込みで、コンピュータ上でやります。
どうしても、という場合は、抵抗の直並列つなぎ、可変抵抗(半固定抵抗)などを使います。その場合は抵抗の精度も気にする必要があります。
なお、そこそこまじめに増幅回路などを作るときは、金属被膜抵抗(通称1%抵抗)を使います。これは温度による変化も少なく、安定した増幅回路を作ることができます。
加算回路は右のような形をもっています。簡単に気づくとおもいますが、これは反転増幅回路の入力が単に増えたものです。これがどういう風に動作するか考えてみましょう。
今回は最初から仮想接地を使います。仮想接地のため、P点は0Vと考えます。
この回路は複数の入力電圧を適当に抵抗比で重みをつけながら加算することも可能です。
また、キルヒホッフ第一の法則より、
これらをまとめると、
よって、
となります。すべて同じ値の抵抗を使うと、
です。
なお、非反転で同じようなつなぎ方をすることはできません。
なお、単なる減算については、あとで「差動増幅回路」という差を取る回路がでてきますので、それを使います。
右図の回路では、
実用上は、コンデンサに並列に大きな抵抗を入れることがあります。本来積分はどんどんたまってしまうものですが、抵抗が並列に入っていると、適当に電荷が抜けて飽和しなくなります(もちろん、積分からずれます)。または、コンデンサに並列に電子スイッチを取り付けて、コンデンサを空にする仕掛けをつけます。
が成立します。反転増幅と違うところは、電流を積分すると電荷、電荷をCで割るとコンデンサの端子電圧です。
これを解くと、
となり、入力電圧を積分する回路になります。
右図において、
ただし、実用上、これをそのままつかうとひどいことになります。微分というのはその性質上、ノイズのような激しく変化するものを拡大します。そのため、コンデンサと直列に適当な抵抗を入れて、微分として動作する周波数を低く抑えます。
なので、
となります。
回路はとても簡単で、右図に示すようにオペアンプの出力と−入力を接続しただけです。
これは、見方によっては、非反転増幅回路の一種です。非反転増幅では、出力電圧は
なお、本によっては「ボルテージホロワ」と書いてあります(長いこと「ほろわ」ってなんだろ、と疑問に思っていましたが、ある日「follower」(follow+er)だと気づいて納得しました。)。
で得られました。ここで、ボルテージフォロワの接続では、R2=0(直結)、R1=∞(無接続)に相当します。すると
が成り立ちます。
また、オペアンプにとって、この接続はつらい(発振しやすい)使い方で、特殊なオペアンプではこの接続での動作を保証していないことがあります(普通は大丈夫)。
差動増幅回路は右の図に示すように、オペアンプに抵抗を4本接続して作ります。 以下、動作を見ていきましょう。
まず、─入力端子の電圧を求めます。これは反転増幅回路と同じように考えて、
ここで、簡単のため、R1=R3, R2=R4とおくと(実際の回路でも普通はそうします)
そこで、信号の線を2本にする方法が使われる場合があります(右図下)。2本の信号線の一方は、送るべき電圧をそのままに、もう一方の線は「×−1」して送ります。これを差動増幅回路で受取り、もとの信号に戻します(この図の場合、信号は最終的に2倍になっています)。
となります。+入力端子は、単純にV2を分圧したものなので、
です。仮想短絡が成り立っており、
なので、
となります。
となり、
ですが、差動増幅には、もう一つ、信号の送受信という主な使い道があります。
右図に概略を示します。
普通、電気信号を伝えるためには、基準となる線(GND)と、具体的に伝える信号をセットにします(右図上)。安いマイクの端子や、テレビとビデオをつないだり、ゲーム機とテレビをつなぐ赤白黄の同心円のプラグは良く見ると電極が2個あり、外側(根本)の面積の大きい方が一般にはGND、中心(先端)の電極が信号です。
ところが、異なる電化製品をつないだ場合に、様々な原因により、電圧信号が正しく伝わらず、不要な信号(ノイズ)が信号線に入り込むことがよくあります(電圧が比例して落ちるだけ、は平和な部類)。外から入ることもありますし、本来は固定のはずのGNDが乱れることもありますし、複数の信号を同時に送る場合はそれらが相互に混入(クロストーク)することがあります。
音なら聞こえる雑音になりますし、映像だと多少乱れたりします。これは、距離が長くなればなるほど、ひどくなります。
これは、そういう雑音は、「近接する、同じ性質の線には、同じように入る」という傾向が強く、雑音をnとすると、Vおよび-Vを送信した場合に受け側ではV+n, -V+nを受信、この差をとると2Vとなって、雑音がキャンセルされます。
そのため、高級なオーディオ、体育館で使うような(=線がものすごく長い=ノイズが入りやすい)マイクなどでは、この基準+信号2本で送る方式、差動伝送、平衡伝送がつかわれています。形は多少異なりますが、ネットワークのケーブルなども、この方式です。
なお、一見すると、この方法、GNDがいらなさそうですが、受け側のオペアンプはあくまで自分の電源電圧の幅しか受け入れられません。そのため、両者の基準は「ほぼ」合わせておく必要があります。
これは右図のような回路をしています。オペアンプが3個もありますが、部分毎に見てみます。
まず、OP3についてみると、A,B端子間の差動増幅になっています。これらの端子はオペアンプOP1,2の出力端子に直結なので、上で述べたような、入力端子の問題の影響は基本的にありません(電流が流れても電圧が変わらないことになっている)。そのため、出力電圧Voは、R3=R5、R4=R6の条件の下で、
さて、本体のOP1, OP2について考えます。この回路でも仮想短絡を前提とすることができます。
そのため、両オペアンプの+入力端子と−入力端子は同電圧と見なせます。
この回路の特徴は
となります。
ここで、点Aと点Bの間の経路を考えます。点Aから抵抗R1,R0,R2を通る点Bまでの経路は、OP1, OP2の入力端子には電流が流れないことから、各抵抗に同一電流が流れます。そのため、
が成り立ちます。よって、
この2式の辺々を加えると、
よって、
となります。
となります。なお、一般には、R1=R2と選びます。これまでの抵抗の統一と合わせると右図のようになります。
などです。同じインスツルメンテーションアンプには、オペアンプ2個、抵抗4本のみで構成する回路もあり、そちらのほうが低コストにはなりますが、上記の2,3番目の利点は持ちません。
センサが、「差を取る」必要があり、かつ電流が流せない場合には、何も考えずにこの回路を採用してみるといいでしょう。
なお、理想オペアンプでは、非反転増幅回路2個をただの差動増幅につないでも似た結果が得られますが、実在回路の場合は、電圧の飽和(出力が電源いっぱいになってそれ以上でなくなる)のしやすさで大きな違いがあります。
回路図を右図に示します。反転増幅回路から抵抗を一本とった形になっています。
このとき、入力端子から電流Iが流れ込むと、仮想接地によって、Vin-端子は0V、なので、
なお、直前の電流を出力する回路は、「GND(0V)に向って電流を流す」仕様になっている必要があります。
次に扱う電流出力アンプは対応していません。
という簡単な式になります。電流値を抵抗値で倍数した物が出力にでてきます。
定電流回路を右図に示します。形は非反転増幅回路に似ていますが、考え方が違うので、別物として考えます。
これまでの回路は出力がなにもつながっていなくても動作しますが、これに関しては出力がつながっていなければ動作しません。そこで、出力に負荷抵抗RLがつながっていると考えます。
負荷抵抗の性質などにも影響を受けますが、仮想短絡が働いていると考え、−入力端子は、Viと同じ電圧とします。
ここで、抵抗RLの大きさなどは考えずに、オペアンプのVoutからRLを通して、電流Ioutが流れるとします。
流れた電流は、この回路に戻ってきますが、オペアンプの入力には流れないため、全部、抵抗RSに流れます。
この、RSの両端に生じた電圧RSIoutが、オペアンプの─入力端子の電圧となります。よって、
が成り立ち、
となります。つまり、入力電圧に比例した電流を負荷に流すことができる回路になります。
なお、出力電圧は、「この電流が流れるように」自動的に決まります(RsIout+RLIout+その他要因)。たとえば、モータは回転数が上がると逆起電力という電圧が生じるため、一定の電圧をかけていると徐々に電流が減ります。この回路を使うと、その分も込みで出力電圧が調整され、電流が指定通りになるように機能します。
この回路の注意点は、
などがあります。電源やGNDに直結したい場合には、別の工夫をする必要があります(電源につなぐのは案外簡単、GNDに繋ぐのは全く別の回路が必要)。
電磁石、モータなどは一般に問題は少ない。
大出力のパワーオペアンプを使うか、オペアンプのパワーアップ回路(出力ブースト回路)を追加する。
この目的で、一番簡易的に用いられるのは、右に示すような回路です。
ここで、三角に棒が一本ついたような記号が初登場しましたが、これはダイオードという半導体部品の一種です。
ダイオードは、三角の向いている方向には電流を流し、逆向きにはほとんど流さないという特性を持ちます。
これをグラフにしたのが、右図の下です。横軸に電圧、縦軸に電流をとり、加える電圧と流れる電流の関係をグラフにします。
抵抗の場合は、E=RIなので、電圧と電流は比例するので直線になります。
ダイオードの場合は、電圧が流れない方向にかかっている場合(電圧負)、電流はほぼゼロです。
流れる方向に電圧がかかると、ある程度電圧があがったところで急に電流が流れ始めるようになります。
理想的には正になったらすぐに流れてほしいのですが、実際にはこのような特性になり、この流れ始めるあたりの電圧を「順方向降下電圧」と呼びます。一般的に入手できるシリコンダイオードで0.6〜0.7[V]程度、低めのもので0.4[V]程度などですが、ダイオードの種類や流す電流によってこの降下電圧は変ります。
さて、正の部分だけをおおざっぱに得るにはこの回路で十分ですが、この順方向降下電圧分目減りすることや、電流によって特性がかわることなどもあり、正確な計測にはつかえません。そこで、オペアンプを併用した回路をつかいます。
まず、単純な反転増幅回路の場合は、入力Vi>0の場合は出力Vo<0となり、Vi<0の場合はVo>0となります。
まず、入力ViからOP1を経てP点に至る回路は先ほどの直線検波回路です。R2=R1なので、
この回路において、Vi>0が入力された場合、R1を通って流れ込んだ電流は、D2は逆向きなので、R2に流れます。出力になにもついていない(もしくは、ほとんど流れていかない)場合は、その電流は、D1を通ってオペアンプの出力端子が吸い込みます。
これによって、反転増幅回路と同じような動作となり、Vo=-(R2/R1)Viとなります。
逆に、Vi<0が入力された場合、オペアンプ−入力端子から、R1を通って入力側に電流が流れていきます。その電流は、正方向なのでD2を通って、オペアンプから流れてくることができるため、仮想接地が成り立ちます。この状態で、オペアンプの出力はD2の順方向降下電圧だけあり、Voに外部からむりに正の電圧が加えられない限りはD1は逆電圧がかかった状態になるため電流が流れません。その結果、仮想接地の0[V]にR2を通じて出力をつないだようになります。
となります。この回路を直線検波回路と言います。
です。つぎに、ViおよびP点からOP2を通して出力Voに至る回路は、以前やった加算回路です。
この回路は、, R4=R5=2R3と仮定しているので、
となります。
以上、組み合わせると、
となります。これは
に他ならない、絶対値を求める回路になります。
となります(加算回路部分より明らかです)。
ローパスフィルタの主な使い道は、ノイズ除去です。一般に、ノイズとされる不要な雑音信号は周波数が高いところに存在します。ロボットに搭載するようなセンサは一般に1[kHz]も反応しないのですが、モータが出すノイズやその他電磁波などは多くがそれよりも周波数が高いところに存在するため、ローパスフィルタを適宜いれれば解決できます。
一方、ハイパスフィルタは主に直流成分を除去するために使用します。センサの出力を数百〜数万倍と大きく増幅したい場合、センサの出力に最初から1V足されたような状態で出力されていると、それも一緒に増幅してしまうことになります。また、オペアンプは実際に使うと出力のゼロ点が若干ずれることがあり、これも問題になることがあります。このような常に加わっている直流の電圧を除去する場合、これまでの方法を使うなら、差動増幅などをつかって引きます。
このローパスとハイパスを適宜組み合わせると、ある周波数範囲だけを通すバンドパスフィルタがつくれます。
今回の回路では周波数を10倍にすると、増幅率が10分の1や10倍になる傾斜です。これは一見すると大きな変化に見えるかもしれませんが、実際につかうとかなりヌルい特性です。そのため、回路を工夫して、周波数10倍で100分の1、千分の1といった急激な減衰を得る回路もあります。
反転増幅回路のオペアンプの出力と入力−をつなぐ抵抗Rfに、コンデンサCを並列に接続しています。
コンデンサが無い場合の電圧増幅率は(Rf/Ri)です(符号略)。
さて、コンデンサは、その電流の流れやすさが周波数によって変わるという説明を以前しました(
抵抗RfとコンデンサCの並列つなぎを考えると、周波数が十分低い場合、(1/2πfC)がRfに比べて大きくなるため、並列つなぎしたものの抵抗はほぼRfになります。そのため、周波数が低い場合は、この回路の増幅率はRf/Riです。
一方、周波数が十分高い場合、(1/2πfC)がRfに比べて小さくなるため、並列つなぎ全体で(1/2πfC)になります。つまり、増幅率は(Rf/2πfC)になります。これは周波数が10倍になると、増幅率が10分の1になることを意味します。
ローパスフィルタのときと同じように、周波数によってRiと(1/2πfC)のどちらが大きいかを考えると(直接接続の場合は、大きい抵抗の抵抗値が支配的)、その特性が得られます。
ですが、この信号の出力で直流分、すなわち静止状態の信号や、周波数の低い=ゆっくりした変化がいらない場合は、このハイパスフィルタをいれてそれらを除去して増幅することができます。
このような増幅の代表例は音声信号です。人間に聞こえる周波数は低くても20[Hz]なので、増幅するときに低い周波数をカットしてもかまいません。また、特定の周波数の計測と限定されていれば、それ以外は除去できます。
回路はこれまでで一番簡単です。オペアンプの+入力に入力電圧をかけ、−入力端子に何らかの比較対象となる電圧Vrefを与えます。ここでは電源を書いていますが、オペアンプの入力は電流が流れないため、たとえば抵抗で分圧したものでもかまいません。
なお、通常のオペアンプでもコンパレータとして使えますが、一般には専用の「コンパレータ」というICを使います。これはオペアンプによるコンパレータに比べて高速応答すること、デジタル回路との接続がしやすいことなどの利点があります。
そのようなときに使うのが、右に示すヒステリシスコンパレータです。一見すると反転増幅回路に見えるのですが、よく見ると入力端子が逆になっています。つまり、−端子がGNDに接続され、+端子に入力と出力が抵抗を介してつながっています。
このような行き帰りの違う特性をヒステリシスといい、この回路をヒステリシスコンパレータといいます。
このヒステリシスは現実の世界にはいろいろありますが、制御対象としたり、センサとしては一般に嫌われる特性です。
この回路では、入力端子の差を大きく増幅して出力する、というオペアンプの特性上、入力がVrefより大きいと出力は最大値に振り切り、入力がVrefより小さいと最小値に振り切ります。
たとえば、実在のオペアンプを±12[V]で動作させた場合、大きいと出力は10[V]程度、小さいと-10[V]程度になります。
この回路を具体例で見ていきましょう。たとえば、R2=5R1だとします。また、オペアンプの出力は±10[V]とします。
つまり、ただのコンパレータに比べて、抵抗比できまるところまで粘ります。逆に、一度切り替わってしまうとちょっと入力が戻ったくらいでは再度切り替わりません。
この回路を使えば、ノイズでこまごまと切り替わることは一般になくなります(この切り替え幅より大きいノイズがくるとこまりますが)。
身近な例では、寒くなってきたときに、しばらく夏服で粘りますけど、あるところまでいくと衣替えして冬服に。その後ちょっと暖かくなっても夏服にはもどしません。逆に、冬が終わりある程度まで暖かくなると(冬服にした温度よりは高い)、夏服に切り替えると思います。これも一種のヒステリシスです。
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