基本的にはこのページの内容に沿って講義を行っていきますが、だからといって、これに目を通したことで授業を休んだりサボったりしていい理由にはなりません。
逆に、このページをみることも義務づけはしません(が、うっかりここに書いてあるけど話忘れたことを試験に出す可能性は否定できず)。
講義を受ける前の予習や、講義内容の補填などに使ってください。
講義をうけるにあたっては、板書よりも「話したこと」に注意を払ってください。 おそらく、板書することの多くはここにかいてありますが、脱線して話したことは書いてありませんので。
ロボットがわりと身近で見られるようになって数年が経過していることや、各種家電に「マイコンなんとか」と名前がつくようになってから十数年(最近は当たり前になりすぎてつかなくなりましたが)が経過したことからもわかるように、今時の装置類の多くはコンピュータ制御になっています。
これからの時代の機械をつくり、整備し、扱うためにはコンピュータの知識がかかせません。
それと同時に、機械とコンピュータの仲立ちをするための電子回路(コンピュータ自身も電子回路の一種ですが)も大事なものとなっています。
このような時代背景の元、機械系の学科であっても、電子回路についてそれなりに知識を持つことが必要になったと言え、それを学ぶことをこの講義の目的としています。
この科目は必修に限りなく近い「メカトロニクスI」と選択性の高い「メカトロニクスII」からなっています。 前者では、電子回路の基礎知識を、後者では実際にメカと連動する部分についてを扱います。
メカトロニクス | |
工業製品とメカトロ | |
さて、この講義の範疇ははみだしますが、メカトロニクスにはもう一つ大事な要素があります。電子回路で情報が扱えるとはいえ、いまどきの機械の各種機能を電子回路だけで実現しようとすると地獄です。そこで、ふつうはこれに文字にはない「コンピュータ」が加わります。コンピュータももちろん電子回路ですが、その機能性と、コンピュータの上で動くソフトウエア(プログラム)という概念から、電子回路とはわけて考えます。
コンピュータについてはすでに別の科目で触っているので、この科目ではそれはおいといて、トロの部分、電子回路について学びます。
ちなみに、機械がメカトロ化すると、一般に電子回路が増えるのは当然として、モータの数も増えたり、全般にシステムが複雑化します。
たとえばミシンを例にとります。従来のミシンはモータが1個(0個で、足踏みだったり(^^;)あって、それを各部に伝えます。ミシンを実際に見たことはあると思いますが、動くところは「針の上下」だけではなく、「布の送り」「下糸の釜の回転」などもあります。さらにジグザク縫、模様縫などの場合は針を左右にも動かします。本来、モータの動力は回転運動ですが、カムやリンクを複雑緻密に組み合わせることで、これだけの動きを実現しています(のみならず、つまみを回すだけでその動作のオンオフや程度の調整ができる)。
今時の電子制御なミシンはというと、最初から動かす場所の数だけモータが用意されていたりします。昔のミシンは、一本の軸からつらなるカムで動くことで、すべての動作のタイミングを合わせていました(逆に、ずらすことは難しい)。今のミシンは中のコンピュータがモータ1個1個の回転角度などを調整し、タイミングを合わせるようになっています。プログラムで動かす場合は、動かし方の目標を変えるだけで速度や触れ幅を簡単に調整できます。そのため、より複雑な模様縫が簡単にできるようになります。(※針の上下とカマの回転は今も機械的連動が一般的)
この違い、使う側にとってはあまり見えないかもしれませんが、作る側にとっては劇的な変化です。もちろん、ただのメカ屋が電子回路やコンピュータもというのは大変ですが、それとは別に、設計がとても簡単になるのです。
部品の数や種類が増えるのに簡単?と疑問に思うかも知れませんが、複雑な動きになればなるほど、カムのようなもので正確に動かすことは職人芸の域に達し、削って調整しては動かして確認、完成してもちょっと動作変更があったらやりなおし、と大変です。
ところが、部分部分にモータをわけてつけると、それぞれの要素ごとに、単純な形で設計し、個々に動作調整もできます。その上で、ソフトウエアで全体の動作をきめるため、「あ、ここ振幅もうすこし小さくして」といわれたら、その数字を書き換えるだけです。
電子制御というと、お客さんの目を引くために導入されているように見えて、実は開発を楽にする仕掛けでもあるわけです。
しかも、メカの部分をほとんどいじらずに、ソフトの書き換えだけで大幅機能アップとかが簡単にできたりするので、新製品も出しやいのでないかと思われます(^^;;
このように、電気には「エネルギー」としてと「信号」としての2種類あり、区別して考える必要があります。 明確に区別するときには、「電気回路」と「電子回路」といってみたり、「強電」と「弱電」といってみたり、「パワーエレクトロニクス」なる言葉があったりしますが、あまり明確に用語が区別して用いられないことがあったり、わりと死語になっていたりするので、言葉の上ではあまり気にせず、意味で常に意識するようにしましょう。
ここまでの話からすれば、もう、この科目は「信号としての電気」を主にやりそうだ、と気づくと思います。エネルギーとしての電気も多少は触れますが。
ただ、エネルギーとしてつかうのも、信号として使うのも、物理的な意味は同じです。そのため、まずは電気の特性について学び、電子回路の基礎について学び、計測やモータなどについて学んでいきます。
メカトロニクスIでは、最低限必要な範囲として、電気に関する基本的な理論、電気信号を扱うための基礎として、アナログ回路、ディジタル回路の基礎と、簡単な計測についてあつかいます。
続編、メカトロニクスIIでは、より複雑な計測をしたり、モータを回すなど[メカトロニクス」としての実践例が増えます。また、それにともなって、電源回路なども含め、回路の範囲も広がります。