ただの映像セレクタと違うところは同期した映像信号であることを 利用して、「切替」に加えて「画像合成」が可能な点です。厳密には 信号の切り替えで合成するのですが、1画面内の短時間で 切り替えていきます。
仕様は以下のようにしました。
1画面(1/60秒)毎に2映像を切り替える
上(下)半分をカメラ1、下(上)半分をカメラ2から持ってきて1画面に合成
左(右)半分をカメラ1、右(左)半分をカメラ2から持ってきて1画面に合成
フレームシーケンシャルと組み合わせると飛び出す立体テレビになります
切り替えには NJM2246(150円@秋月)を使用しました。これは3入力の
映像信号を切り替えられるICで、6dBのアンプもついています。ただし、
このアンプは電圧増幅のみで、電流がとれません。
ビデオ信号の規格では、1Vp-p の信号を75Ωの出力インピーダンスで駆動し、
受け側でそれを75Ωで受け取ることになっています。簡単に言えば、
2Vp-pで十分な電流を出力できるアンプから75Ωの抵抗経由で出力コネクタに配線し、
入力コネクタでは信号とGNDの間に75Ωの抵抗を挟みます。
NJM2246の出力にトランジスタなどで適当に増幅回路をつくってもいいのですが、
こまごました部品が多くなるので、増幅IC, NJM2267(150円@秋月)を使用しました。
これは、1Vp-pのビデオ信号を入力すると2Vp-pにして増幅してくれる
ありがたいICです。スルー出力は、単に入力信号をNJM2267で増幅して
出力しています。NJM2246からの出力は、すでに2倍されてしまって
いるので、510Ω×2で1/2に分圧してから入力してます
(510*2なのは 2246が1kΩ負荷を想定しているため)。
あとは、切り替え信号をいれてやれば、どちらかのカメラの映像が
出力されます。
左右分割、上下分割は、同じ原理で生成しています。映像信号が1画面を
描くには、左上から右に1ラインを出力し、順次下方向にラインを出力して
いきます。そのラインの左端の時点で水平同期信号が、一番上のラインが
描かれる前に垂直同期信号がきます。水平方向に分割するには、1ラインの
前半と後半を切り替えるような信号、垂直方向に分割するには、130ライン
程度で切り替える信号(1画面262ライン)を生成すればいいわけです。
ここでは典型的に74HC123を使ってつくりましたが、同期信号の検出ぶれや、
アナログによるワンショット回路であるためのばらつきにより、あまり
きれいには切替信号ができないことがあります。
もし、最初から合成を目的とした同期ビジョンをつくるのであれば、
同期化回路でカメラから直接同期信号を取り出せますし、
切替信号の幅もクロックをもとに生成できますので、
シャープで確実な切り替えができます。
その選択入力は3bitあります。適当にスイッチをつけてもよかったのですが、出来心で
遠隔操作できるように赤外線リモコン対応にしました。
赤外線リモコンに対応するというと、かなり面倒そうですが、
◆◆梵天丸◆◆を流用して実装しました。
梵天丸は小〜高校生あたりを対象にしたロボットキットで、
赤外線センサを用いた2輪型自律・自立の移動ロボットです。
CPUにはPIC16F84を搭載し、プログラムには「まきもの」という独自の
シーケンス制御的な言語を使用します(現在、日本語、英語、中国語、韓国語に対応)。
このロボットの(BI)OSにあたる部分が、便利なことにソニーのテレビのリモコンを
理解できます。そのため、面倒なこと抜きに赤外線リモコン対応の
装置ができてしまうのです(専用のお手軽PICライタあり)。
今回はついでに本体にも切り替えボタンをつけ、
それも処理してもらうようにしました。
これは一部3Dのパソコンゲームなどでも使用されている技法で、
そのような液晶シャッタ眼鏡は市販されています。
これを使うことにしました。そのまま流用したかったのですが、
どうも変な保護回路が入っているようで、奇数偶数フィールド信号の30Hzでは
反応しませんでした。
液晶シャッタは15V程度の電圧をかけると黒になって遮光し、
0Vで透明になるようです。ただし、液晶は直流電圧をかけると、
黒くなってしばらく戻りません。そこで、同じ黒くするのでも、
かける電圧の正負を逆転させます。つまり、電圧を
実際に、この動作を回路だけでやると、多少面倒なので
PIC16F84をつかってプログラムで処理しました。また、正負の電圧を
つくるのも面倒だったので、
RS-232C のラインドライバ(互換品250円@秋月)を使いました。
そこで、それぞれ、水平同期信号(複合同期)と垂直同期信号から
ワンショット回路で約30usと8.3msの信号をつくって切り替え信号にします。
(水平同期: 15.75kHz, 垂直同期:60Hz)
とはいえ、梵天丸自体は4500円と今回使った部品に比べたら高価な上、
ギアやらタイヤやらが余ります。そこで、プログラム開発・機能確認後、
PIC、セラロック、赤外線受光部だけのサブセットをつくって組み込み
ました(全部秋月)。ちなみに、梵天丸の基板をそのまま使う場合は、
自由に使えるのはRB2-5です(まきものでサポートしているのはRB2-7)。
それで済まない場合は、14pinのへッダにRB6,7 MCLR, GND, 5V を
つないで置けば書き込み機はつかえます。
参考:使用したまきもの
仕方ないので、解析して回路をつくり直しました。
(キャプチャすると1ラインごとに交互になる)
熊谷正朗 / くまがいまさあき
東北学院大学
工学部
機械創成工学科
RDE