ベクトル:
標準で縦ベクトル、一般に小文字、ボールド(太文字)表記
転置(T)で横ベクトル。
ベクトルの長さ(大きさ)。
用途:
ベクトルは状態変数など、状態量をあらわすのに使用。
ベクトルの加算、スカラ倍:
行列:
例)
、
(2×3)
行列は数字や関数を縦m行×横n列の形に並べたものです。
一般に大文字、ボールド表記。
特にm=nの場合、n次正方行列といいます。
ベクトルは行列の特殊な例(n×1、1×m)とも見ることができます(行列とベクトルの演算は行列同士の演算として扱える)。
各成分を個別に扱うときにはの形で第i行第j列を表します(小文字、非ボールド、添字)。
用途:
行列はシステムを表したり、システムを評価したり、値の重要度を重み付けしたり、この科目では非常に多用されます。使えるようにしましょう。
注意:
一般に、
は成立しない
ことに注意。そのため、行列の乗算を行うときは、「右からかける」「左からかける」と掛け方に注意します。
例)
に対して
左からCをかけたと、右からCをかけた
は成立しますが、
左右をごちゃまぜしたは一般に成立しません。
転置:
に対して、
と行と列を入れ替えたものを転置と言い、右肩に添字Tをつけて表します。
("Tenchi"のTではなく、"Transpose"のT)
行列の積の転置については以下の式が成り立ちます。
行列の積の転置は個々の行列の転置を逆順にして乗じたものです。
行列式は正方行列から以下の式で計算する数値です。大きさそのものではありませんが、いろいろと多用される数値です。
表記:
行列に対して、
計算:
2次正方行列:
3次正方行列:
行列式には以下の性質があります。
n次の正方行列A
から、i行とj列を抜きます。
これに対して、行列式を求めて、符合をつけた
をに対する余因子といいます。
この余因子を使うと、より高次の行列式を計算できます。
n次正方行列Aに対して、
(行列Iは対角成分のみ1で残りは0のn次正方行列、単位行列、Eと表記することも多い)
となるようなn次正方行列Xを、Aの逆行列といい、と右肩に"-1"をつけて表します。
逆行列は必ず存在するとはかぎりません(行列式が0でない場合に存在)。
計算:
で求めます。全要素に対する余因子を計算して、ならべて行列にして、転置して、行列式で割る、です。
性質:
「積の逆行列」は個々の行列の逆行列の逆順の積」になります。(c.f.転置)
逆行列は、「行列の逆数」「行列分の1」的な扱いが可能であるため、今後の制御理論の式変形などで多用されます。
行列の各行、各列が互いにどのくらい独立しているかを表す数値として階数(rank)という数値があります。 現代制御理論では、「可制御」「可観測」という、制御できるか、状態を把握できるかを分析するときに使用します。
階数を求めるには、以下の基本変形を行います。
ベクトル x を行列 A で変換するとき、
(行列 A にかけても、λ倍になるだけ=方向変わらず)
を満たす、0ではない x を固有ベクトル、λを固有値といいます。
定義より、
が成り立ちます。ここで x が0以外の値をとるためには、
となる必要があります。
※この行列式が0でなければ逆行列が存在し、
※
※となってしまうため。
この方程式、
を特性方程式と呼びます。なお、
ならば、
も成立します。固有ベクトルの大きさは定まらず、各要素の比率(ベクトルの方向)のみ定まります。
また、特性方程式はλのn次方程式になるため、重解がなければ固有値、固有ベクトルはn組あります。
重解の場合、対応する固有ベクトルはn本得られることもありますが、足りなくなる場合もあります。
固有値λ1…λnに対応する、固有ベクトルをv1…vnとします(重解の時はn本求まった場合)。
ここで、このベクトルを並べてできる行列
を考えます。
左からTの逆行列をかけて、
を得ます。つまり、固有ベクトルを並べて作った行列とその逆行列で、行列をサンドイッチすると、対角線上に固有値が並んだ対角行列を得ることができます。
補足:
1行目を(1,0,0,0)にする。
※2列目=2列目−1列目×2、4行目=4行目+1行目
1行目で余因子展開。
3行目を(0,1,0)にする。
※1列目=1列目+2列目×6
3行目で余因子展開。
行列式:
余因子行列:
よって、逆行列は
となる。
検算:
ちなみに:
注意:
ではない(すごく間違いそうな例)。
のrankを求めてみる。
2行目に1行目の(−3)倍を加える
これ以上操作できず、3行目まで数値があるので、rank=3。
のrankを求めてみる。
1行目と2行目を入れ替える。
3行目に2行目の(−6)倍を加える。
これ以上操作できず、2行目まで数値があるので、rank=2。
の固有値を求めてみる。
特性方程式は
(λのかわりにsを使用)
よって、固有値はs=1,2,3である。
それぞれに対応する固有ベクトルを求める。
s=1:
よって、v1=v2=v3である。たとえば、v1=1として、
となる。
s=2:
第2式の2倍から第1式を引くと、v1=0が確定, あとはv2=v3であるため、たとえばv2=1として、
を得る。
s=3:
第2式の2倍から第1式を引くと、v2=0が確定。あとはv1=v3であるため、たとえばv1=1として、
を得る。