はじめに

[| ]  最終更新: 2011/02/10 19:32:35

このページについて

熊谷が平成18年度を持って制御工学IIの担当を降ります。
そのため、本ページ(※)の更新は基本的に停止しますが、ご了承下さい。
※course/controlII/以下のコンテンツ
このページは 東北学院大学 工学部 機械創成(知能)工学科 3年生の講義、「制御工学II」用のオンラインページです。
基本的にはこのページの内容に沿って講義を行っていきますが、だからといって、これに目を通したことで授業を休んだりサボったりしていい理由にはなりません。 逆に、このページをみることも義務づけはしません(が、うっかりここに書いてあるけど話忘れたことを試験に出す可能性は否定できず)。 講義を受ける前の予習(ページ執筆が間に合えば)や、講義内容の補填などに使ってください。 注意事項の詳細をまず確認してください。

講義をうけるにあたっては、板書よりも「話したこと」に注意を払ってください。 おそらく、板書することの多くはここにかいてありますが、脱線して話したことは書いてありませんので。


制御工学IIでは

講義の目的

すでに履修を終えている(はず)の「制御工学I」に引き続いて制御理論を扱うのが、この講義です。
ただし、その中身はがらりとかわります。

制御工学Iでは運動方程式などをラプラス変換してシステムの伝達関数H(s)を求め、その 周波数 ごとのゲイン(増幅度)や位相(信号の進み、遅れ)を評価しました。ひとことでいうと「周波数領域で考える」制御です。
それに対して、制御工学IIで主として扱う制御理論は、運動方程式などの微分方程式を、微分方程式のまま扱います。また、評価は、たとえば「制御中の目標との誤差のトータルがどのくらい小さいか」とか「操作量のトータルがどれくらいちいさいか(=モータの消費電力がすくないなど)」とかをみます。 時間 の経過に対する変化をそのまま扱うことが特徴で、「時間領域で考える」制御理論です。

その理論が登場した歴史的?順番から、制御工学Iのほうは「古典制御理論」、今回やるほうは「現代制御理論」と呼ばれています。

ある程度現代制御理論を扱ったあと、いろいろな制御にも触れます。

現代制御理論の概要

前述の通り、微分方程式を微分方程式のままつかいます。ですが、ごちゃごちゃした方程式のままでは理論的に扱うことが難しいため、方程式を1階の微分方程式の組に変換します。
(例)
m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=f
  ↓
\dot{x}&=&v\nonumber\\  m\dot{v}+cv+kx&=&f
  ↓
\dot{x}&=&v\nonumber\\  \dot{v}&=&-(c/m)v-(k/m)x+(1/m)f

さらに、これを行列の形で表します。
\Mto{\dot{x}}{\dot{v}}=\Mtt{0}{1}{-(k/m)}{-(c/m)}\Mto{x}{v}+\Mto{0}{1/m}f
  ↓
\dot{\vect{x}}=\vect{A}\vect{x}+\vect{b}f

このようにn階の線形の微分方程式は、1階の微分方程式n本に変換できます(非線型でも可の場合あり)。 この形に変換した、各変数を「 状態変数 」、その関係を記述した上式を「 状態方程式 」といいます。
現代制御理論では、システムの微分方程式を状態方程式に変換して、この行列Aの性質を数学的に調べたり、これをもとにフィードバックを考えたりすることで、制御を行う理論です。

古典制御と現代制御の比較

比較項目古典制御現代制御
扱う対象周波数領域時間領域
数学表現伝達関数状態変数、状態方程式
数式表現sの分数式行列、ベクトル表記
評価対象伝達関数のゲイン、位相状態変数の大きさ、入力の絶対値の積分値を総合的に
入出力基本的に1入力1出力多入力多出力可能
解析手段おおむね手計算でなんとか手計算は難、コンピュータ援用が前提
実装方法アナログ回路、ディジタル回路、ソフトウエアソフトウエア
対象ある程度特性がわかっていれば(近似的な伝達関数が得られたならば)だいたい扱える。内部のパラメータまで細かく表現されている必要がある。
制御設計直感、ボード線図を検討、根軌跡など評価の重みをきめてコンピュータで計算


講義内容の予定

本講義では現代制御理論の基礎的な部分を中心に扱う他、以下のような「いまどきな制御」内容も扱います。


熊谷正朗 [→連絡]
東北学院大学 工学部 機械知能工学科 RDE
[| ]