メカとコンピュータをつなぐ回路
メカトロ機器の一つの目立った形であるロボットは、メカトロであるがゆえの特徴があります。
多くの部品がコンピュータを介してつながっていることです。
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ディジタル制御システムの例 |
従来の純機械によるシステム、旧来の電子制御によるシステム、今日のコンピュータ制御のシステムも、すべて制御(明示的、暗示的に)を行うシステムでは、対象→検出→制御則→操作→対象が、対象システムにひっついています。
機械システムではこれがリンク機構などのメカニカルな要素で、電子制御システムは電子回路で構成されています。
今日のシステムでは、これにコンピュータが単に仲間として加わったのではなく、原則として中間に入ります。検出された情報の加工や変換、制御則、それらがコンピュータ上のソフトウエアで行われます。
それを模式図としたのが先にも出ている右図です。
そのため、メカトロなシステムの場合、
- センサはそれぞれコンピュータに適切につながっていればよい
- アクチュエータはそれぞれコンピュータに適切につながっていればよい
という、非常にシンプルな構成となります。そのため、それぞれの部材からコンピュータまでの部分だけを適切に設計製作すれば、その部分はセンサなどと一緒にどこかにもっていってすぐ使えます。また、実際の値への変換(たとえば、温度センサならAD値から温度の実数値)もソフトウエアなら式1本です。
むろん、旧来のシステムでもこのような区分けはできますが、案外接続部の調整がめんどうだったり(メカニカルなシステムでは実質的に再設計)、制御部分をおいそれとつなぎ変えられなかったりします。
ここでいう「適切」とは、センサやアクチュエータの性能が十分に引き出され、かつ、十分に細かく扱える、ということです。
そのためには、
- センサやアクチュエータの最大能力(出力、信号振幅、信号速度)と、信号の最大能力が一致するように変換できる中間回路
- センサやアクチュエータ本来の分解能(=区別できる細かさ)を無駄にしない中間回路。
- 対象の「最大出力/分解能」よりも、分割数の多い入出力部分のA/D、D/A、その他カウンタなど
- A/D, D/Aなどとつないで相互に影響を与えないような回路設計(A/Dに必要な電リュを供給できる=出力抵抗の低さ、D/Aから電流をなるべくとらずに動く回路=入力抵抗の高さ、ようはオペアンプで回路を作ればわりとOK)
が要求されます。たとえば、あるセンサが、
- 出力0〜1[V]
- 細かさ:0.001[V]
- 100Hz程度まで応答
の場合、マイコンについているA/Dを0〜5で使うなら、
- A/Dは少なくとも10bit(=1024段階) ←1/0.001=1000
- 1kHz以上の変換速度(一般に10倍は見ておく)および処理頻度
- 0〜1を0〜5に変換・増幅する増幅回路 0.001[V]まで扱えること
という条件の回路です。
逆に、それだけの回路さえ用意すれば、コンピュータにつながり、結果的に制御システムに使える、ことになります。
回路の傾向
具体的な回路の傾向は、パソコンベースの制御システムと、マイコンベースのシステムで、そこそこ異なります。
両者に共通する特徴としては、
- ディジタル系が好まれる
→アクチュエータ:PWM制御、Hブリッジなど
→センサ:パルス出力型(数、周波数、幅など)
コンピュータとの親和性、効率、耐ノイズ性
があげられます。ステッピングモータやロータリーエンコーダなどは、その分かりやすい例です。
両者で異なるのは、アナログの入出力です。
実際には、今日では出力でアナログが使われることは少なく、もっぱら、入力のみです。
- パソコンの場合:
一般に、入力信号は±10Vなどの、アナログ電圧として妥当なレンジをもつ。
そのため、正負のあるセンサは単純に増幅してつなぐのみでよい。
一方、片方向の出力の場合は、レベルシフト(センサ=ゼロを適切な電圧に移す)も必要。
- マイコンの場合:
一般に0〜5Vなどの片電源型が多い。これはマイコン自体が片電源で動作するため。
正負のあるセンサは、増幅して信号振幅をあわせつつ、レベルシフトを行い、ゼロ点が2.5[V]などになるようにする。正出力のみのセンサの場合、単電源オペアンプなどのみで回路を済ませられることも多い。
という構成となります。ただ、実際には、正負の物理量があるセンサでも、物理量=0のときに2.5Vを中心に出力するようなセンサもあります(一般に、こういうセンサも単電源で動くため、装置としては作りやすい)。この場合、どういったレベルシフト、どういった増幅をしながら信号を変換するかがキモとなります。
ただ、依然として「個別に」考えればよく、「コンピュータにつなげば勝ち」といえるところが、メカトロシステムのとても気楽なところです。