はじめに

[| ]  最終更新: 2011/09/28 09:59:24

このページについて

このページは 東北学院大学 工学部 機械知能工学科 2〜3年生の講義、「メカトロニクスIおよびII」用のオンラインページです。

基本的にはこのページの内容に沿って講義を行っていきますが、だからといって、これに目を通したことで授業を休んだりサボったりしていい理由にはなりません。 逆に、このページをみることも義務づけはしません(が、うっかりここに書いてあるけど話忘れたことを試験に出す可能性は否定できず)。 講義を受ける前の予習や、講義内容の補填などに使ってください。 注意事項の詳細をまず確認してください。

講義をうけるにあたっては、板書よりも「話したこと」に注意を払ってください。 おそらく、板書することの多くはここにかいてありますが、脱線して話したことは書いてありませんので。


機械屋の電子工学?

この科目は電子工学な科目です

この講義は機械屋がこれからの時代知っておくべき電子工学について扱います。

ロボットがわりと身近で見られるようになって数年が経過していることや、各種家電に「マイコンなんとか」と名前がつくようになってから十数年(最近は当たり前になりすぎてつかなくなりましたが)が経過したことからもわかるように、今時の装置類の多くはコンピュータ制御になっています。 これからの時代の機械をつくり、整備し、扱うためにはコンピュータの知識がかかせません。
それと同時に、機械とコンピュータの仲立ちをするための電子回路(コンピュータ自身も電子回路の一種ですが)も大事なものとなっています。

このような時代背景の元、機械系の学科であっても、電子回路についてそれなりに知識を持つことが必要になったと言え、それを学ぶことをこの講義の目的としています。

この科目は必修に限りなく近い「メカトロニクスI」と選択性の高い「メカトロニクスII」からなっています。 前者では、電子回路の基礎知識を、後者では実際にメカと連動する部分についてを扱います。


メカトロニクス

機械工学と電子工学の融合した分野を
   メカトロニクス(Mechatronics) (俗称メカトロ)
といいます。これは
  メカニクス(Mechanic, 機械工学)+エレクトロニクス(Electronics, 電子工学)
と、文字通りの合成語です(世界で通用する和製英語の一つ)。

 機械+電子回路+コンピュータ=メカトロ技術
 メカトロニクス
 工業製品とメカトロニクス
 工業製品とメカトロ
 
いまどきの機械はほとんどこのジャンルに属します。 昔の機械は、コンセントにつないでスイッチオンで「ぐぉぉぉん」とモータが回るだけで仕事していました。いまも、安い扇風機や掃除機などではこのタイプのものがまだまだ残っています。ところが、最近の扇風機は風がゆらいだり、掃除機も汚れ具合いをみながら出力がかわったりします。冷蔵庫やエアコンも、昔はただモータに電気をつなぐとコンプレッサが回って動くだけでしたが、その効率を改善するために「インバータ」なる接頭詞がつきモータが電子制御で回るようになりました。自動車も昔はメカニカルに点火パルスが出たり、燃料噴いたりしていたものが、最近は電子制御です。
こういった昔ながらの機械がどんどん電子制御になっている一方、ロボットに代表される、いまどき生まれの機械は最初から電子制御前提だったりします。

さて、この講義の範疇ははみだしますが、メカトロニクスにはもう一つ大事な要素があります。電子回路で情報が扱えるとはいえ、いまどきの機械の各種機能を電子回路だけで実現しようとすると地獄です。そこで、ふつうはこれに文字にはない「コンピュータ」が加わります。コンピュータももちろん電子回路ですが、その機能性と、コンピュータの上で動くソフトウエア(プログラム)という概念から、電子回路とはわけて考えます。
コンピュータについてはすでに別の科目で触っているので、この科目ではそれはおいといて、トロの部分、電子回路について学びます。

ちなみに、機械がメカトロ化すると、一般に電子回路が増えるのは当然として、モータの数も増えたり、全般にシステムが複雑化します。 たとえばミシンを例にとります。従来のミシンはモータが1個(0個で、足踏みだったり(^^;)あって、それを各部に伝えます。ミシンを実際に見たことはあると思いますが、動くところは「針の上下」だけではなく、「布の送り」「下糸の釜の回転」などもあります。さらにジグザク縫、模様縫などの場合は針を左右にも動かします。本来、モータの動力は回転運動ですが、カムやリンクを複雑緻密に組み合わせることで、これだけの動きを実現しています(のみならず、つまみを回すだけでその動作のオンオフや程度の調整ができる)。
今時の電子制御なミシンはというと、最初から動かす場所の数だけモータが用意されていたりします。昔のミシンは、一本の軸からつらなるカムで動くことで、すべての動作のタイミングを合わせていました(逆に、ずらすことは難しい)。今のミシンは中のコンピュータがモータ1個1個の回転角度などを調整し、タイミングを合わせるようになっています。プログラムで動かす場合は、動かし方の目標を変えるだけで速度や触れ幅を簡単に調整できます。そのため、より複雑な模様縫が簡単にできるようになります。(※針の上下とカマの回転は今も機械的連動が一般的)
この違い、使う側にとってはあまり見えないかもしれませんが、作る側にとっては劇的な変化です。もちろん、ただのメカ屋が電子回路やコンピュータもというのは大変ですが、それとは別に、設計がとても簡単になるのです。 部品の数や種類が増えるのに簡単?と疑問に思うかも知れませんが、複雑な動きになればなるほど、カムのようなもので正確に動かすことは職人芸の域に達し、削って調整しては動かして確認、完成してもちょっと動作変更があったらやりなおし、と大変です。 ところが、部分部分にモータをわけてつけると、それぞれの要素ごとに、単純な形で設計し、個々に動作調整もできます。その上で、ソフトウエアで全体の動作をきめるため、「あ、ここ振幅もうすこし小さくして」といわれたら、その数字を書き換えるだけです。
電子制御というと、お客さんの目を引くために導入されているように見えて、実は開発を楽にする仕掛けでもあるわけです。 しかも、メカの部分をほとんどいじらずに、ソフトの書き換えだけで大幅機能アップとかが簡単にできたりするので、新製品も出しやいのでないかと思われます(^^;;

二つの電気と講義の方針

メカトロニクスなどと口にする機械屋にとって、俗にいう「電気」(もちろん照明ではない)は二つの意味を持ちます。

工場でモータをまわしたり、家庭でAC100Vで扇風機回したり、スイッチ引くと照明がついて明るくなったり、コタツが暖かかったりといった使い方の電気は前者にあたります。エジソンあたりが発電器やモータなんかで商売を始めたころよりの、電気と機械との付き合いです。
一方、パソコンを動かすにも電気は必要です。パソコンの中にもディスクを回すモータがあったりしますが、それをのぞくと、特に動いたり、明るくなったり、暖かくなったりしません。いや、厳密にはモニタは明るいですし、パソコンからは温風(熱風?)が出ますが、それはそれ自体が目的ではありません。それじゃ、電気を何につかっているかというと、情報を表すための信号として、電気をつかっています。よく耳にするディジタルというのは、信号の形の一つで、たとえばある電線の電圧が高いか低いかの2種類だけで情報を伝えます。 パソコンだけではなく、たとえば電話(音だしますが)やインターネット、時計や温度計(針のないやつ)、テレビなどは、なかの電気の大部分は信号として使われています。
(で、信号として使われた電気は最終的には熱になってしまいます)

このように、電気には「エネルギー」としてと「信号」としての2種類あり、区別して考える必要があります。 明確に区別するときには、「電気回路」と「電子回路」といってみたり、「強電」と「弱電」といってみたり、「パワーエレクトロニクス」なる言葉があったりしますが、あまり明確に用語が区別して用いられないことがあったり、わりと死語になっていたりするので、言葉の上ではあまり気にせず、意味で常に意識するようにしましょう。

ここまでの話からすれば、もう、この科目は「信号としての電気」を主にやりそうだ、と気づくと思います。エネルギーとしての電気も多少は触れますが。
ただ、エネルギーとしてつかうのも、信号として使うのも、物理的な意味は同じです。そのため、まずは電気の特性について学び、電子回路の基礎について学び、計測やモータなどについて学んでいきます。

メカトロニクスIでは、最低限必要な範囲として、電気に関する基本的な理論、電気信号を扱うための基礎として、アナログ回路、ディジタル回路の基礎と、簡単な計測についてあつかいます。
続編、メカトロニクスIIでは、より複雑な計測をしたり、モータを回すなど[メカトロニクス」としての実践例が増えます。また、それにともなって、電源回路なども含め、回路の範囲も広がります。


講義の内容:メカトロI

講義は以下のような流れで進めます。

電子回路の基礎

3回程度


電子計測:センサ

1回


アナログ回路

3、4回程度


ディジタル回路

3、4回程度


電子計測の実際

1、2回程度




熊谷正朗 [→連絡]
東北学院大学 工学部 機械知能工学科 RDE
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