機械に絡んで電子回路を扱うのは大きく二つです。
- 機械の状態などを電気信号に変換して収集する:計測
- コンピュータなどの指示を十分に増幅して、モータなどを動かす:操作
最近は後者についてはモータメーカが専用回路をつくって販売していたりすることもあって、むりにつくらなくとも、モータなどを動かすことは簡単になりました(もちろん、作らなければならないこともありますが)。
一方、前者については、触ったかどうかなどの単純で一般的な物については、いろいろ市販されていますが、研究に必要なものとなると、案外特殊で、自分でなんとかしなければならないことがあります。
そういうとき、まずは状態を何らかの電気信号に変換するための「センサ」を見つけてきて(さすがにセンサから作るのは大変です)、後ろにつなぐべきもの、たとえばコンピュータ(にアナログ電圧を取得できる拡張ボードをさしたもの)で受け取れるように変換するための電子回路を作らなければなりません。
このあと、アナログ信号を扱うための回路、ディジタル信号を扱うための回路などを順次講義しますが、その前に、そもそも、どんなセンサがあるか、どんな信号が出てくるかを知っておき、なぜそういう回路が必要なのかを認識するための基礎としましょう。
センサとは、物理的な、科学的な、その他もろもろの状態をsenseするためのもの、sensorです。
ものすごくいろんな種類がありますが、いくつかに分類することができます。
普段、機械屋が必要とする物理現象については、だいたいそれを測定するためのセンサはそろっています。
- 長さの変化(大きな変化、微小変化(ひずみ))
- 角度の変化
- 圧力
- 音、衝撃
- 光、明るさ、色
- 温度
- 磁気
これらのセンサが出力する電気的な特性は以下のようなもので、概ね、同時に示すような方法で処理されます。
- 電圧変化
そのまま電圧として処理する。
- 電流変化
電圧に変換してから処理する。単純にはE=IRなので抵抗に流せば電流に、もしくは電流−電圧変換回路を使用。
- 抵抗変化
電圧に変換してから処理する。単純には普通の抵抗と組み合わせて分圧回路として使用。もしくは、定電流源を接続して、E=IRで電圧に変換。
- 容量変化
電荷を詰めておいて、Q=CVで、Qが一定ならCが変化するとVが変化するのを利用。コンデンサの電極の距離が変化すると容量が変わる。もしくは、発振回路を形成して、周波数の変化として取り出す(周波数はディジタル的に取得可能、もしくは周波数−電圧変換)。
- パルス出力
回転などに比例した数のパルス、もしくは比例した時間幅のパルスが出てくる。ディジタル回路で数えたり、幅を測定したりする。
です。つまり、これらの方法を知っておけば、あとは、センサを買ってきてなんとかすればいい、ということになります(あくまで、原理的には。そう簡単には行かないこと多し)。
また、センサは、ほとんど「感応する物質」や原理そのものの物体だったりと非常に単純なものから、複数のセンサや高度な電子回路を内蔵したものまでいろいろあります。
測定対象 | 出力の形態 |
電圧変化 | 電流変化 | 抵抗変化 | 容量変化 | パルス | その他 |
回転角度 | (複)角度センサ | | ポテンショメータ | | ロータリーエンコーダ | ロータリースイッチ(電極切替) |
回転角速度 | 圧電レートジャイロ | | | | | |
直線変位 | (複)変位センサ | | リニアポテンショメータ | | リニアエンコーダ | スイッチ(接触OnOffのみ) |
存在 | (複)フォトリフレクタ、(複)フォトインタラプタ、(複)近接センサ(金属探知) | | | | | スイッチ(接触OnOffのみ) |
ひずみ、力 | (複)力センサ | | ひずみゲージ | | | |
速度 | (複)速度計 | | | | | |
加速度 | (複)加速度計、(複)傾斜計 | | | | 加速度計(IC) | |
圧力 | 圧力センサ(圧電素子) | | 導電ゴム、スポンジなど | 気圧センサ | | |
流量、流速 | (複)流量計(羽/プロペラ+角度、オリフィス+圧力)、電磁流量計 | | 熱線抵抗式流速センサ | | | |
音、超音波 | マイク(複、マグネティック、圧電素子) | | 昔の電話(炭素粉) | コンデンサマイク | | |
衝撃 | 圧電素子(厳密には電荷) | | | | | |
光、色(光+カラーフィルタ) | | フォトダイオード、フォトトランジスタ、CCD撮像素子(の中身)、PSD、焦電センサ | CdSセル | | 光電子増倍管(光子) | (複)ビデオカメラ、(複)デジカメ |
温度 | 熱電対 | 焦電センサ(遠赤外線) | 普通の抵抗、サーミスタ、半導体 | | | (複)サーモグラフィ |
湿度、水分 | | | 湿度計 | | | |
磁気 | コイル(交流磁界のみ)、ホール素子、(複)地磁気センサ | | MR素子 | | | |
| | | | | | |
| | | | | | |
測定対象 | 電圧変化 | 電流変化 | 抵抗変化 | 容量変化 | パルス | その他 |
出力の形態 |
「(複)」はセンサそのもの+電子回路など、複合的なもの
参考:出す方:
- 力(直動、回転)←電流:コイル、電磁石、モータ
- 力/変位←電圧:圧電素子
- 磁界←電流:コイル
- 光←電流:LED(発光ダイオード)
- 光←電力:電球
- 熱←電力:抵抗(電熱線)、CPU(冗談)
- 音←電流:スピーカ
- 音←電圧:圧電素子