はじめに

[| ]  最終更新: 2011/02/10 18:48:11

このページについて

このページは 東北学院大学 工学部 機械知能工学科 3年生の「ロボット基礎工学」用のオンラインページ兼、講義ノート兼、講義立案兼、メモなどのページです。(すなわち常に工事中)

基本的にはこのページの内容に沿って講義を行っていきますが、だからといって、これに目を通したことで授業を休んだりサボったりしていい理由にはなりません。 逆に、このページをみることも義務づけはしません(が、うっかりここに書いてあるけど話忘れたことを試験に出す可能性は否定できず)。 講義を受ける前の予習や、講義内容の補填などに使ってください。 注意事項の詳細をまず確認してください。

講義をうけるにあたっては、板書よりも「話したこと」に注意を払ってください。 おそらく、板書することの多くはここにかいてありますが、脱線して話したことは書いてありませんので。


ロボット工学

ロボット工学とは

ロボットの工学です。
で、おわりにしてもまずいので、補足。
ロボットとされるものをつくって動かすには、さまざまな要素が必要とされます。 メカ、電子回路類、コンピュータソフトウエア類を設計し、実装するための技術と、どの情報をどう処理して、どうつかって仕事をさせるかという理論が大きな柱です。 そういったものをひっくるめた学問がロボット工学といえます。
ロボット工学分野は、ここ30年くらいの分野ですが、急速に発展を続け、関連学会がいくつもあるほどです。 そのため、その全部を扱うことは到底無理なので、この科目ではそのなかの基礎的な理論の部分を扱います。

ロボットとは

上で「ロボットとされるもの」などと曖昧な表記をしているのにはわけがあります。 ロボットという単語の明確な定義は、いまのところ見当たらないのです。

ロボットの研究者が100人いれば、100の見解の違いがあるといわれるほど、ロボットとロボットじゃないものの境界はあいまいです。 一応、人間の機能を模したものといいますが、宇宙ロボットのように本来人間にない機能まであったりしますし、車輪移動ロボットは「移動」という観点からは人間を模していますが、ただの自動車はロボットかというとロボットじゃありません。
また、知能や自律的判断が必要とされていますが、工場であらかじめ教えられた通りにだけ動く(低級の)産業用ロボットにそれなりの判断力があるかといえば微妙です。
現在の分類では、ロボットはメカ+エレクトロニクス+コンピュータのメカトロニクスに含まれることが一般的ですが、非常に高機能な江戸時代のからくり人形はただのメカか、ロボットかなど(メカだと思ってますが、外国の方には面倒なので Japanese traditional robotとか説明(^^;)。
もっと分かりやすい?例では、モビルスーツ(ガンダム)やレイバー(パトレイバー)がロボットか単なる乗り物かという点ですら見解に相違があります(わたしはロボットだと思いますが、ロボットじゃないという方もいます)。

そういう最初が微妙に曖昧な話ですが、この講義では

高度な機械の一種であり、センサなどで周囲の状況や自分自身の状態などを把握しつつ、コンピュータ制御で「動く」もの。
という位置づけにしておきます。そういう意味では、最近の家電もロボット化が激しく、洗濯機なのか洗濯ロボットなのかが曖昧です。掃除機に関しては、掃除ロボットというジャンルができていて、人間が操作しなくても勝手に走り回って掃除してくれます(効率を別として)。 洗濯機も、最近のすごいのは勝手に判断して洗濯して乾燥までしてくれます。 たたむむ機能がついたらロボットを名乗るようになるんでしょうか(笑)。

ともあれ、この講義では、その中でも基礎的な、腕のロボットに関することと、車輪移動ロボットに関することを扱います。

講義でアンケート(35人くらい) 県民大学で(50人くらい)
対  象ロボット非ロボット ロボット非ロボット
アトム、ドラたくさん 2518
ガンダムたくさん 1233
ハロたくさん N.A.
エヴァンゲリオン誰も知らなかった? N.A.
工場の産業ロボたくさん 40
からくり人形25 33
梵天丸15 1824
乾燥付全自動洗濯機 2021
自動駐車機能付き車 2018
以下余談:
同じように「ヒューマノイド」という単語も微妙で「足がついてて人型必須」という見解と、「車輪で動いていても人間らしい振る舞いができればいい」という見解があります。個人的趣味では足がほしいところです。
語源はチェコのカレル・チャペックという戯曲家が書いた"R.U.R."(1920, Rossum's Universal Robots, える、うー、える、日本語訳は RUR、我はロボット、ロボット、人造人間など複数)というお話(劇の台本みたなもの)とされていて、「労働」という単語から造語されたといわれています。 この本をロボットの専門家になってから読んだのですが、いまの機械の延長としてのロボットというイメージとは異なり、バイオテクノロジーで人工筋肉とか人工神経とかからつくられた肉っぽい人造人間でした。 ただ、工場で量産されていたり、その量産するのもロボットがやっていたり、人間の仕事の肩代わりをしてくれたり、そういう意味では、近いといえます。
ネタバレはしませんが、この本を読んで思ったのは、海外と日本におけるロボットに認識の違いです。 日本はロボットアニメのおかげでロボットは身近な存在で、友だちだったりすることがよくありますが、海外に行くとおもいっきり悪役だったり(大体未来はロボットに支配されてたりする)、暗かったり(案外、ロボコップは暗い気がする)、ネガティブな面が多く見られます。 ある意味、RURから真っ直ぐ行くと海外パターン、どこかで方向が変わって、ロボット三等兵やアトムやドラえもんやアラレちゃん(いずれも古いです)あたりで友だちなって、マジンガーZで乗り物になったというか、独自の発展をして日本パターンかもと。
あ、あと、人間がいちいちリモコン操作する、NHKでよくやっていた高専ロボコン(映画もできたようですが(^^;;)は、ロボットコンテストではなく、リモコンコンテストだと思っています。最近は、自律型のロボット子機をつかうとアドバンテージがあるルールになっていたり、ロボットコンテストになっていますが。 ロボットコンテストと言ったら、知能ロボットコンテストのように、人間が一切手出しをできないのが本式です:-) 。
鉄人28号はリモコン持ってますけど、あのリモコンでいちいち操作できるわけはなく、れっきとしたロボットでしょう。

講義の予定

細かいスケジュールは決まり次第講義情報に記載する予定です。
おおまかには

  • 導 入: 
    この講義の導入。
  • 線形代数の復習: 
    この講義で使用する線形代数の基本演算の復習。 そんなもん、知ってる、馬鹿にするなという場合は、気にしなくていいですが、某科目のことを考えると、やっておきます。
  • マニピュレータ型ロボットの理論: 
    代表的なロボットである、マニピュレータ型(腕型)のロボットを設計し、解析し、動かすための数学的理論を扱います。 最低限、構造、座標変換、順逆運動学、静力学くらいまではやって余裕があれば動力学のさわり。 ちなみに、脚移動ロボット(歩行ロボット)は理論的にはこの範疇です。
  • 車輪移動型ロボットの理論: 
    産業上移動ロボットによくつかわれる、車輪移動についての、構造や移動の理論、制御方法などを扱います。
  • ロボット実装方法: 
    ロボットは理論だけでもつくれないので、より細かな技術的なことに踏み込んでお話しします。 という内容を予定しています。 また、ときどき、小テストやレポートなどを予定しています。

    マニピュレータ

    産業用ロボット、という解説でよく見掛けるような、人間の腕にも似たような形のロボット。 そもそも、manipulateという単語は「扱う」で、腕という意味はありませんが、先っちょのハンドでなにかをつかんで運んだり、さきっちょに溶接機をつけてあつかったりするので、manipulatorというと腕、という意味合いがついたものを思われます。
    大抵は、土台になる部分(固定のことも移動のこともあり)があって、棒状の剛体の部材(リンク)がモータなどで駆動される関節(ジョイント)でつながった構造です。 土台の反対側である、具体的な作業を行う個所をエンドエフェクタといって、そこをいかに制御するかが課題です。 完全にリンクとジョイントが交互に現れ、線で書くと一本になる構造を直列リンク、リンクで輪ができるものを並列リンク型といい、構造だけではなく、計算などの面でもいろいろと違いがあります。 人間は一見直列に見えますが、関節を駆動する筋肉は何本も並列にはいっているため、並列型です。

    ちなみに、人間も腕と平衡感覚を鍛えれば、腕で(逆立で)歩くことができるように、ロボットのマニピュレータもちゃんとつくれば歩くことに使えます(語弊あり)。 歩行ロボットの脚と腕は本質的には違いはありません。 ただし、そもそも土台がしっかりしていない点や、想定するべき力、着地の度に衝撃(撃力)が発生すること、始点と終点だけではなく、途中の動かし方が大きな影響をおよぼす点など、実際には全くといっていいほど違います。

    車輪移動型ロボット

    文字通り車輪で移動するロボットです。 脚移動にくらべて、不整地(平らでは無い面)への適応性以外では圧倒的に優位で、移動ロボットと言った場合は一般に車輪を使っています(一部にクローラ(=キャタピラ)なども使われる)。 産業上も多用されていて、 その利点として、効率がいいとか、電源を切っても倒れないなどの、物質的な面もいろいろありますが、なにより使う数式が少なくてすみます。
    数式にわりと忠実に動くので、理論の勉強でそこそこ動かせるようになるとおもいます。 この講義では簡単な応用例も含めて扱いたいと思います。



  • 熊谷正朗 [→連絡]
    東北学院大学 工学部 機械知能工学科 RDE
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