秋月カメラ MK-7428の同期化改造

最終更新: 2011/02/10 20:11:28 [| ]  最終更新: 2011/02/10 20:11:28

ターゲット

ここでは 実際のカメラの改造までの経過を解説します。対象は (株)秋月電子通商で、 11,700円(本体のみ、レンズ付きは15,500円)で販売されている MK-7482NBです。CSマウントでレンズ交換が可能で、 用途が幅広いのとしっかりしたケース入りなので、 (普段は)取り扱いが便利です。これを2個買ってきて、改造しました。

おやくそく

  • 当然、改造するときは、壊す覚悟を決めてください
  • 以下の記述はうまく行った例を示すものです。たまたまかもしれません。 必ずうまく行くことは保証しません。
  • 本ページに基づいて行った行為による損害は、著者熊谷は一切 受け付けません このカメラは、構造的に以下の改造をしても、(壊れなければ) もとに戻すことが出来ますが、普通は戻らないと思ってください。

    カメラの分析

    まずは、カメラの分析にかかります。

    探すもの

    分析によって、見つけ出さなければならないのは、

  • 主たるクロックを発生させているところ
  • 1画面(1/30秒)周期のロジック信号 です。カメラの基板には、表と 裏を確認して、水晶発振子らしきものは 1個しかありません。オシロスコープで確認すると、約19.1[MHz]で 発振していることが確認できます(カメラには 19.07[MHz]を使うものが わりとあるようです ←3種類の秋月カメラで確認)。

    次に、周期信号を探します。これは、カメラを動かしたまま、 かたっぱしから、探っていきます。この時、1/30周期の信号を 見つけ出すのが難しい場合、もしくは 1/60にも見える信号はあるものの、 1/30かどうか微妙な場合は、2信号を組み合わせます。具体的には、 水平同期信号(15.75[kHz])と垂直同期信号(60[Hz])、もしくはそれぞれに 等価な信号です。この二つを組(例えば XOR)にすると 1/30秒周期が得られます。

    分析結果

    パターン上の信号配置

    カメラの基板の表(ばらしてすぐに見えるところ)の 片隅の一番大きな(とはいえ小さい)正方形のICがどうも、タイミング生成部 (というかこれ1個でほぼ全機能)の様です。X1とX2は 裏面にある水晶の足です。両者の信号を オシロで観測してみたのですが、 波形からはどちらが入力側か不明でした。適当な抵抗経由で 19.07[MHz]の 波形をつっこんでみて、X1側が入力であることを確認しました。

    次にロジック信号は、適当にあさったところ、1および2と 記した箇所で、それぞれ複合同期信号(映像信号に含まれる同期用信号)と 水平同期信号(CCDを駆動するために多少調整したらしいもの)が得られました。 なお、2については、□で囲んだ箇所を最初改造ターゲットにしたの ですが、ここは半田が載らず、接続先の左下のICの4番目のピン(赤線で示した)を 対象にしました。

    それぞれの信号を観測したものを、2種類示します。
    タイミング1、 タイミング2
    上が信号1、下が信号2で、垂直同期信号付近を拡大表示しています。 良く見ると、2つの観測結果で、上下の信号のタイミングが、 下の信号半周期分ずれています。これが1/60秒周期で2種類の画面が あるという部分で、これが二つセットで 1/30秒周期になります。

    ここまで分かれば、次はいよいよ改造です。


    カメラの改造

    カメラ本体の改造は2つの手順で行いました。

  • 水晶をはずす
  • クロック供給線、同期信号拾い線、GNDの接続

    まず、水晶は、ごく普通にはずします。
    この手のものをはずすときは、 半田吸い取り線とかはあまり効きません。むしろ、引っ張りながら加熱、 が効果的です。だれかに引っ張って貰うのもいいと思います。 私は一人でやってます。右手は半田ごて、左手は基板です。左手は親指、 中指薬指で基板をホールド、人指し指を水晶にかけます。最初は短い方向の 左右にこじるように力をかけながら、交互に半田を溶かし、ちょっと浮いてきたら、 長手方向に力をかけながら。溶かしていない方の足をてこにする感じで。 ジャンクばらし歴10年以上で、すでに「はずす」と思ったら 無意識に体が反応してしまうので(笑)、口で説明するのは難しいのですが...。
     水晶はずし前、 水晶はずし後

    次に、既に見つけてあるポイントに線を接続します。

    GNDは触れてませんでしたが、どこか適当に見つけて接続します。 4ピンのコネクタのわきにちょうどありました。
     配線箇所全体図、 複合同期信号、 水平同期信号
    ICへの接続は、それなりにやっかいです。四角いICは 0.5mmピッチです。 私の手順は です。軽く引っ張ってみて、ちゃんとくっついたようだったら、 最寄りの場所にホットボンドで固めてしまいました(止めないでいたら、 パターンごと剥離した経験あり)。図では、ピンの基板側に半田付けしてありますが、 2個目以降でICからの生え際の角を試したら、半田付けが楽になりました。 ちなみに、ブリッジした場合は、フラックスをぬってコテ先(無論 半田は落しておきます)でこすってみると解消することがあります。 それでだめなら、半田吸い取り線をつかいましょう。いずれにせよ、 やたらと加熱するのは危険でしょう。

    ここまでやって、テスタで調べてショートの無いことを確認して、 電源を投入してみます。当然、うつりません。そこに、19.07[MHz]の クロックを接続してみると(次節参照)、成功なら映像が映ります。また、 2本の同期信号の線にも、周期的な信号が 観察されます。


    同期化回路の製作と接続

    カメラ単体で、クロックを加えて動作するようになったら、しめたものです。 同期化回路を加えてみます。

    さて、ずっと水晶をはずして別に用意した 19.07[MHz]のクロックを 外部から加えると言ってきました。もちろん、ファンクションジェネレータ などで与えることも出来ますが、カメラを使う度に持ち出すわけにも いきませんので、自前で用意します。
    ある意味、地球に易しい方法は、取り外した水晶の再利用です。ただ、 水晶を安定して発振させる必要があり、面倒です(恥ずかしながら、私はいままで 完全に成功したことないです)。そこで、手っ取り早く信号を得るため、 水晶発振器(not子)を使いました。とはいえ、19.07[MHz]などと 半端な周波数のものはその辺では手に入りません。
    そこで、トラ技で広告を見掛けていた ラムステート株式会社で 購入することにしました。ここはいろいろ扱ってますが、 特注水晶を 扱っています。本物の特注水晶は、高くつき、納期もかかりますが、 PLLを使っているらしい、プログラマブル水晶発振器も扱っていて、 今回はこちらにしました。これだと、5Vを繋ぐだけで、すぐに 目的にクロックが得られます。クロックまわりの動作試験もこれで やっていました(電源は秋月5V SW-ACアダプタ@850円)。
    実際には厳密には周波数は出ず、最寄りの設定可能な周波数になるのですが、 問い合わせして、注文した手元の伝票では、"SG8002DC19.069921PHC" と 記載されています。誤差無しといってもいいと思われます。
    (送料がわりと高いので(^^;; また使うだろうと思って、3個買って ついでに チップ抵抗(@2円)もごそっと買いました。)

    さて、同期化回路ですが、回路的にはこんな感じです。

  • カメラ1のクロック=(not クロック) and イネーブル1
  • カメラ2のクロック=(not クロック) and イネーブル2
  • イネーブル2=not
    ((カメラ1の複合同期 xor カメラ1の水平同期) xor
    (カメラ2の複合同期 xor カメラ2の水平同期))
    をクロックでラッチ(D-FF)
  • 回路図 カメラ1のイネーブル1は、外部入力端子であえて用意します。 これは、2つのカメラに行くクロックの位相差をなくすため、 ゲートディレイを同じにするためです(カメラ2だけ and するとその分遅れる)。もちろん、クロックのライン長も 同じになるようにしたほうがいいでしょう。位相差は色ずれを 招きます。イネーブル2は、両カメラのロジックの一致検出です。 D-FF でラッチすることで、グリッチ(ひげ)を避けます。それと and を取って問題ないように、イネーブルと and するクロックは not してあります(タイミング図を書くとご理解いただけるかと 思います)。速めのロジックICで組んでもいいと思いますが、 手元にGAL-Writer(ずっとまえにトラ技にのっていた ROM-GALライタ: 重宝してます)があるので、GAL1個に書き込んでいます。余裕から すると、やれば4カメラ同期くらいできそうです。
     回路(汚い上にGALなので 参考になるかどうか...)
     カメラと接続

    一番簡単で確実な試験は、カメラ2側から映像信号がでているか どうかです。映像が出ていれば成功です。回路のミスでないことを 確認するには同期信号の線(4本)のどれかをはずしてください。
    (映像が出ている=ちゃんとクロックがでている=同期信号が一致)

    参考までに、2種の同期信号をxor(+D-FFラッチ)したものを、 示しておきます。
     A 、B
    やはり、垂直同期部分で、2つの微妙に異なるタイミングパターンが 観測されます。どちらでも、同期していることが確認できます。 以上で、カメラの同期化改造は成功です。


    仕上げ

    剥き出しのままだと、線が引っ掛かって切れたり、危険性が高くなります。 そこで、ケースに納めることにしました。このカメラはすばらしいことに、 背面に余分なコネクタ、しかも 丁度4ピンがついてます。ご丁寧に、プラグもセットで入ってます。 本来 AUTO IRIS用のコネクタみたいですがありがたく流用しました。 H,C,G,X は私の落書きで、水平同期,複合同期、GND、水晶です。 このコネクタの最初からついている線をはずし、GND 以外には 万が一の保護用(気休め)の100Ω抵抗を挟んで線を接続しました。
     写真1、 写真2
    (注:微妙な理由により、手元のカメラと位置関係が若干違います)

    これで組み立てると、ちょっと進化します。 さらに、同期化回路も箱にいれて、コネクタを有効活用すると 外部同期のカメラに見えます。
    (注:微妙な理由により、同期化回路の箱は写真がとれていません)

    以上で、同期した2台のカメラをつくることができました。


    N G

    今日の不幸はあしたの知恵 番外編

    Note: 今日の不幸はあしたの知恵とは?
    いまをさること5年前くらい、M2のころに、書き綴った失敗のみ 集めたページ。いまは、サーバ上にあるものの、リンクは完全に 切れているため、検索にもかからない存在。あの頃は若かったんですね(笑)。 いや、コンセプトは、「失敗を2度と失敗しないように糧とする」なんですけど。


    ところで、このページの写真(オシロ画面はオシロの機能で出力)は どうやってとってるんでしょう。不気味なまでの接写があったりしますが。 実は、これ、全部おなじ機材で取ってます。
     MK-7428(笑)
    改造された2台の他に、撮影用の1台が三脚付きで机の上にのってます。 いえ、載ってました(いまは改造したうちの1台がのってます)。 これは便利です。どうせ画面画質しか要求してないので、640x480 なんかでいいですし、ビデオキャプチャにつないでリアルタイムで 映像を確認しながら、適当に直射電灯を遮ったりピントをあわせたりして、 画像取り込みをするだけです(@Linux-v4l, Thanks to さくらださん)。
    スーパーマクロ画像はカメラのレンズ固定のネジを緩めて、レンズがとれる 限界まで回してます(笑)。

    しかし、彼がまさか主役になるとは、想像してませんでした。

    ある日のお昼前

    以下、博士と弟子の会話(笑)

    博:「うむ、カメラのシステムチェックも済んだし、最終組み立てに入るとするか。」
    弟:「らじゃ。」
    博:「それじゃ、その小さい方のカバーを、カメラの前面板と背板の溝に注意してはめて」
    弟:「は〜い」
    ごそごそ、ぐいぐい、ばちん。から、ころん。
    弟:「はかせ〜、はまったんですけど、なにか転がり出てきました〜。なんでしょ〜?」
    博:「??? ケースを加工したときに 切削屑でものこったか?」
    弟:「それにしては、リアルな形状ですが....」
    博:「!!!」(青→紺色)
    ぱかっ。
    博:「あ"っ!!!」
    弟:「ど、どうしました?」
    博:「こ、コイルが...電源部のコイルが」
    弟:「....。」
    博:「と、とりあえず、しゅ、修理... コアが砕けただけ? コアをセットして.. 
       やっぱりうごかん。あ、断線しちょる」
    弟:「つないでみますか?」
    博:「むろん。」
    ナ:「髪の毛より細い線の接続は困難を極めた。しかし 彼らは気合いでなしとげた」
    弟:「電源、いれてみます?」
    博:「祈りながら。」
    スイッチオン。
    博:「映らないなぁ。まだ切れてるのかなぁ。」
    弟:「はかせ〜、このしゅ〜ってでてる煙みたいの、なんでしょうね?」
    博:「!!! 主電源緊急遮断」
    弟:「ご臨終ですか?」
    博:「ご臨終じゃな」(涙)
    
    ※まじで、事故ったとき、頭の中に人格が二つ出来たみたいです。 呆けて現実を理解しない人格と、冷静に分析した人格と....。

    顛末。

    原因は、CCDカメラの基板をはずしたときの再組み立てです。今回、実は、 カメラのケースを90度回転させて取り付けられるように、前後の板に 切削加工を加えてました。そのため、水晶を取る以外に、完全にばらして いたのですが、どうも取り付けを180度誤ったみたいです。
     正 誤
    この正誤は違いが分かりにくいですが、基板を取り付けた金具の 基板の左右にある、ふちの切目の位置が異なります。正しいほうはコイルから 遠く、誤り例では近くなってます。この溝はばらした方ならわかると 思いますが、ケースの側がはまるところで、ここに下側のケースがはまります。 問題は、このケースの側板についている、固定用の雌ねじです。上下2種類の 側板で太さが違うのは気になっていたのですが...。上のは細く、 コイルに当たらないのですが、下のは太く、位置的に コイルに干渉します。ってわけで、180度逆にしたため、干渉位置に コイルが来てしまって、知らずにはめて直撃。みなさんもお気をつけ下さい。
    (上の方で「微妙な理由により」は この辺です)

    で、解決策としては、撮影用に使っていたカメラ(自前)を改造することに 急遽決定。方法は確立していたので、お昼休みに30分くらいでちゃっちゃと 改造終了しました(確立してると そのくらい簡単ですが)。

    まるで、カメラマン2人が主役のドラマを取っていたら、 一人が突然急死して、本物のカメラマンが急遽主役抜擢、という ような....。しかも、悪の組織に改造されちゃいます。不幸な出来事です。 そんなわけで、最後の方、カメラが1台しか映ってなかったりするのは、 同期した一方で、もう一方を取ってたりするからです....。 だって、同期回路はずしちゃうとカメラとして役に立たないんですもの。

    この不幸、みなさんの明日の知恵として役立ててください(合掌)

    さて、撮影用のカメラ、また、かわなきゃなぁ。秋月のWEB発注だと1日で 届くのがありがたいところ。


    熊谷正朗 [→連絡]
    東北学院大学 工学部 機械知能工学科 RDE
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