センサ応用回路例

[| ]  最終更新: 2011/02/10 19:15:00

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これまでの内容、すなわち、センサアナログ回路ディジタル回路を組み合わせて実際に何らかの検出目的を持った回路をつくってみます。

センサのところで述べたように、センサは様々な種類がありますが、だいたいは電圧変化、電流変化、抵抗値変化、容量変化、パルス出力です。電流変化、抵抗変化は基本的に電圧変化に直してから、容量変化は電圧変化やパルスに、パルスは電圧変化にもできますが、最近はディジタルのまま処理します。
本講義で扱った範疇で理解しうる範囲として、いくつかのセンサとそれを使うための回路などを見てみます。


抵抗系のセンサ

抵抗変化型センサの使い方

抵抗値が変化するタイプのセンサには、ポテンショメータ(角度、位置)、ひずみゲージ(歪み)、MRセンサ(磁気)、CdSセル(光)などがあります。
抵抗の変化は回路で伝えることができませんので、まずは電圧に変換します。

電圧に変換する場合、
・多くの場合は、抵抗による、基準電圧の分圧
・まれに、定電流電源→抵抗→電圧
という使い方がなされます。


ポテンショメータ

ポテンショメータ ポテンショメータは直訳すると「分圧計」ですが、多くの場合は角度センサで直線のものもあります。 一般には、角度や移動量に比例して抵抗値が変化するようにつくられています。

回転角度型のものは右の図に示すような構造になっていて、扇形の抵抗板と、回転軸に取りつけられそれをこする擦動子(接点)からなります。抵抗板は端から端まで均一に抵抗が分布しています。
抵抗板端から端までをR[Ω]、軸を回転させたときの、A側の端を角度ゼロ、B側端を角度θmax、接点の位置をθとすると、A−C間抵抗 RACおよびBC間RBCは、
R_{AC}&=&rR\nonumber\\R_{BC}&=&(1-r)R\nonumber\\r&=&\theta/\theta_{max}
で与えられます。ここで、B−A間に適当な電源Vrefをつなぐと(一般には精度が管理された直流電源:基準電源回路)、電圧C−Aは、
V_{CA}=\frac{R_{AC}}{R_{BC}+R_{AC}}V_{ref}=\frac{rR}{(1-r+r)R}V_{ref}=rV_{ref}
となり、角度に比例した電圧が得られます。

一般にポテンショメータ本来の抵抗値はそれほど低くないため、出力端子から電流が流れ出すと影響が出ます。 そのため、ボルテージフォロワ、非反転増幅回路などで受ける必要があります。

※磁石とMRセンサを用いた非接触のものもあり、寿命が長く、軽く動きます。
※転じて、ただの可変抵抗器をポテンショと呼ぶことがあります。
※実際には、接触部が瞬間的に浮く危険性もあり、適当にコンデンサを並列したり、計測に影響を与えない程度の高抵抗を出力とGNDや基準との間にいれ、宙ぶらりんになることを防ぎます。

CdS、サーミスタ

CdSというセンサは、光センサの一種です。光センサは電流出力なものが多い中で、珍しく抵抗変化です。 また、半導体光センサと異なり、広い範囲の波長、とくに人間の可視光によく反応するため、手頃な明るさセンサとして広く使われています。「暗くなると○○」のたぐい、たとえば街灯などはCdSによることが多いです。

サーミスタは温度で抵抗値が変化するセンサです(c.f.熱電対は温度に比例した電圧、また処理回路などを含む温度センサICもある:LM35が有名)。 熱電対などにくらべて、温度の変化を捕らえやすいため、室温センサなどにつかわれることがあります。

いずれも、抵抗値が変化するタイプで、その抵抗をRf(x)(xは物理量)とおきます。この変化を測るためには、一般には固定の抵抗Roを併用して、やはり基準電源を分圧します。
V_{out}=\frac{R_f(x)}{R_o+R_f(x)}V_{ref}
ここで、抵抗の上下を入れ替えると、
V_{out}=\frac{R_0}{R_0+R_f(x)}V_{ref}=\left(1-\frac{R_0}{R_0+R_f(x)}\right)V_{ref}
となるため、物理量と抵抗変化の関係、物理量が増えたときに電圧が増えてほしいか減ってほしいか、で、いずれかを選択することができます。

ただし、この方法は結果が非線型になるため(Roが十分大きければ比例としてみなせる)、場合によっては補正が必要です。もっとも、CdSもサーミスタもセンサそのものが非線型なので、いずれにせよ、数値化には校正に基づく変換が必要です。単に「明るくなったら」とか「寒くなったら」という使い方だけがしたければ、コンパレータで比較すれば良いでしょう。

ひずみゲージ

ひずみゲージも抵抗が変化するタイプのセンサです。 具体的にはひずみに比例して抵抗が増減します。 樹脂の薄いフィルムの上に、薄い金属の膜をつけたもので、その膜が伸び縮み(弾性変形の範囲?)することで長さと断面積が変り、抵抗値が変化します(引伸ばすと抵抗値が上がる)。 このような構造であるため、これまで述べたものと比較して、非常に小幅でしか抵抗が変化しないため、扱いにも工夫が必要です。

微少な変化は単純に言えば増幅すれば良いのですが、問題は変化が小さいため、温度変化の影響なども受ける点です。 ひずみゲージ自身も、ふつうの抵抗も温度が変ると抵抗値も変ります。そのため、単純にCdSやサーミスタと同じような回路を用いた場合、ひずみの変化による出力変化なのか、温度変化によるのかが区別できない可能性があります。

そこで、ひずみゲージは一般に4枚、もしくは2枚+通常抵抗2本を組にして、ブリッジ回路という回路を形成して、計測を行います。


電圧型、電流型センサ

電圧型センサ

熱電対、ホール素子をのぞくと、電圧型センサの大半は、センサ本体(物理現象をあつかう部分)と、それから直接出てくる電気信号(往々にして微弱だったり、癖がつよかったり)を処理する回路が一体化した、集積回路型のセンサです(集積回路と言うよりはもっと装置っぽいセンサもあります)。

集積回路型のセンサには、角速度のセンサのように、そもそも生の信号を扱いがたく処理回路とセットで目的の動作が得られるようなものもありますし、温度センサICのように単品では特性が思わしくないので、処理回路で比例関係にするなど処理したものもあります。
これらのセンサは大抵はそれなりに「弱くない」出力を持っています。たとえば、数ミリA程度の電流であれば、精度に問題がないなどという仕様です(常識の範囲で、モータを直結したりはできません)。 こういったものは次の回路を接続する場合の制約が少なく、あまり難しいことを考えずに回路設計をすることができます。
熱電対は明確に電圧がでるので、扱いやすい範疇です。

一方、ホール素子(磁界の強さに比例した電圧を発生)のように、電圧はでるけど、電流を流してしまうと測定誤差がでやすいセンサもあります。この場合は、抵抗のところでも使ったように、ボルテージフォロワや非反転増幅回路を使うのが無難です。また、ホール素子の場合は二つの出力端子で電圧=電位差が生じるため、差動増幅の必要があります。そこそこどうでもいい回路なら(ただ磁石のNSの定性的な変化を見たいだけなど)、入力抵抗を高めにした差動増幅を、計測に使いたいならインスツルメンテーションアンプなどを採用したほうがいいでしょう。 ※ホールICになって扱いやすいものもあり、これは扱いが容易です。

電流型センサ

電流で出力するタイプのセンサ(主に光センサ関係)は、電流−電圧変換回路によって、電圧に変換してから同様に処理します。光量計測などの目的で使用する場合には、アナログ回路:増幅回路2で扱った電流-電圧変換回路を用います。

産業上は、光センサは案外、ディジタル的に使われています。つまり、オンオフだけを扱いたいような場合に、いちいちオペアンプなどつかっていられません。 そこで、簡易的には光センサ(この場合はフォトトランジスタが一般的につかわれる:フォトダイオード+トランジスタ=ある程度増幅済)と抵抗を直列にします。
一見、これまでの例と同様に分圧になっているようにも見えますが、正確には、光に比例して電流が流れ、その結果、抵抗にも電流が流れて、抵抗の両端の電圧がE=IRで、電流、すなわち光量に比例する、という構造になります。

この場合も、やはり次の回路に電流を吸い出すと動作に影響が出るため、あまり電流が流れないような回路で受ける必要があります。 ディジタル回路に接続する場合には、単純にCMOSのロジック(インバータなど)を接続します。これは入力には電流がほとんど流れないため、最適です。
なお、スイッチのように使う場合は感度の調整が不可欠です。この場合は、抵抗を可変抵抗にしておくと、感度の調整ができます。


パルスのセンサ


複合型センサ

超音波で距離を測定




熊谷正朗 [→連絡]
東北学院大学 工学部 機械知能工学科 RDE
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